(読売 11月14日)
学費を負担する保護者が自ら授業を点検する。
「学生の居眠り、私語が目立つ」、「授業に工夫がないのも一因?」……。
岩手大学の講義室で、前の方に陣取った女性(46)が
きちょうめんな字で感想をメモしていた。
同大は14日までの5日間、全学共通の授業を一般公開。
大学が特に注目するのは、学校側の呼びかけに応じて
「モニター」に登録した保護者の意見。
女性もモニターの1人。農学部に次女が通う。
この日が初めての参観で、勤めを休んで朝から複数の授業を見た。
工夫する教員もしない教員もいる。
同じ大教室の授業でも、居眠りが目立つ一方通行の授業もあれば、
学生とのやりとりを交えてメリハリをきかせた授業もある。
総じて言えるのは、「学生も教員も、もっと緊張感がほしい」。
目の前の授業が、家計に重くのしかかる学費に見合うものか。
その問いかけが生んだ答えだった。
教職員の研修会などで授業改善を進めてきた岩手大が、
一般公開に踏み切ったのは3年前。
だが、参加者は伸び悩み、授業に足を運んでもらう工夫として翌年、
保護者モニター制度を作った。
モニターは公開期間中、自由に参観し、アンケート用紙に感想や意見を書いて
提出するほか、大学が設けた昼食会で教職員や他の保護者と意見交換もする。
主な目的は授業改善だが、
「保護者と大学は、一緒に学生を育てる大切なパートナーなのだと伝えたい」と
モニター制度を推進する玉真之介副学長(54)。
最近の学生は幼さが目につき、勉強や友人関係に悩むと、
簡単に休学や退学をする。
以前に比べて、細かな配慮を必要とするようになったと痛感し、
それらを防ぐためにも保護者との協力関係が欠かせないと考えた。
モニター登録をする保護者は毎年10人足らずだが、意見は多岐にわたる。
学生の受講マナーや教員の授業技術・態度、
「授業公開を知らない教員がいて、参観を断られた」などといった
お粗末な学内状況……。
意見は研修や会議などを通し、具体的に個々の教員に伝えられてきた。
その結果、最近は授業に遅刻する教員が少なくなり、休講も減った。
小さな変化だが、授業に臨む教員の心構えが変わりつつあることを
示していると、玉さんは喜ぶ。
岩手大は今春、地元の岩手県立、岩手医科、盛岡、富士の4大学と
「いわて高等教育コンソーシアム イーハトーブキャンパス計画」に乗り出した。
夏には、県内の小中高校の校長会などと協議の場を設置。
岩手大が、県全体の教育力の向上の中核を担う。
そのためにも、玉さんは「まず足元から」と力を込める。
共通科目に限定されていた公開の対象を専門科目にも広げ、
年内に教員同士の授業参観も始める。
保護者モニターの役割はさらに重くなり、人数を増やす必要もある。
地域の未来が、授業改善の新たなエンジンになろうとしている。
◆いわて高等教育コンソーシアム イーハトーブキャンパス計画
授業改善の共同実施や共通キャンパス整備などを進める。
人材育成や大学進学率の向上を通した地域の活性化を狙う。
2010年度までの3年間の取り組みで、今年度、文部科学省の
「戦略的大学連携支援事業」に選ばれた。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081114-OYT8T00241.htm
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