2008年8月17日日曜日

建国60年迎える韓国の苦悩

(日経 8月13日)

韓国は15日に建国60周年を迎える。
日本による植民地支配からの解放記念日の「光復節」。
苦難を乗り越え、北東アジアで存在感を増しているが、
内政・外交ともに方向感を失っているような印象。

建国当時と比べた韓国の経済発展は、目を見張る。
65ドル程度にすぎなかった1人当たり国民所得は、2万ドルを突破。
朝鮮半島の分断や朝鮮戦争を経験しながら、
「漢江の奇跡」と呼ばれる急成長を達成。
輸出主導型の経済システムを築き、造船や半導体など
世界トップのシェアを持つ企業が育った。

政治的にも、軍事独裁から民主社会への道を歩んだ。
自由主義と市場経済を選択した韓国の正しさは、独裁体制下で
国際社会から孤立する北朝鮮との差をみれば明白。

民主化の定着とともに、国民の関心は「個人の生活安定」に移った。
今年2月、実利主義を掲げた企業家出身の李明博政権が発足したのは、
いわば時代の要請。

だが、米国の金融不安や原油高の影響で、年7%の実質成長率を
目指した李政権の成長戦略は修正を迫られた。
期待を裏切られた国民の政権離れで、大胆な経済政策を
打ち出しにくくなるジレンマを抱えた。

外交もしかり。
当初は日米との連携強化を掲げたものの、
米国産牛肉の輸入再開問題で国民の反感が強まった。
米大統領の訪韓後も、韓国内で反米感情はくすぶり、
米韓自由貿易協定(FTA)が年内に批准できるか予断を許さない。

日本との間でも、竹島(韓国名は独島)の領有権を巡る対立が続く。
韓国は、9月に日本で開く日中韓首脳会談に出席するかどうか、
なお態度を留保したまま。

北東アジアの安全保障にとって、日米韓の連携は欠かせない。
特に北朝鮮の核問題の行方は流動的で、
米国はテロ支援国家の指定解除を当面見送った。
南北関係は、北朝鮮で起きた北側による韓国人観光客射殺事件で
最悪の状態に。
拉致問題を抱える日本とともに、北朝鮮に共同対処すべき時。

韓国にとって、「実利」は何か?
還暦が、日米韓連携の重要性を再認識する機会になってほしい。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080812AS1K1200212082008.html

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