2008年8月16日土曜日

厳戒の北京五輪 開かれた中国へ弾みを

(日経 8月9日)

北京五輪が異例の厳戒態勢の下、幕を開けた。
中国は21世紀の大国として、国際社会に認知される歴史的節目にしたい。

だが、五輪開催決定時に約束した人権状況の改善は進んでいない。
五輪が、平和で民主的な「開かれた中国」への転機になるのか?

五輪には、史上最多の204カ国・地域が参加。
8日の開会式は、壮大な催しが続いた。
中国の数千年の歴史を、絵巻のように再現する華麗で幻想的な演出。

「ついに、我々は奥運(五輪)にたどり着いた」。
中国の隔週誌「世界知識」最新号は、こう題する特集記事で、
五輪開催は清朝の時代からの悲願だったことを紹介。

1908年、雑誌「天津青年」が五輪に関し、
中国はいつ(1)選手を派遣できるか、(2)金メダルを取れるか、
(3)五輪を開催できるか、の三つの問いを提起。
100年後、共産党政権が第三の夢をかなえた。

改革・開放30周年の今年、中国は国内総生産(GDP)で
ドイツを抜いて米国、日本に次ぐ世界3位に。
「世界の工場」、「世界の市場」として台頭。
福田康夫首相、ブッシュ米大統領、プーチン・ロシア首相、
サルコジ仏大統領ら80人を超す首脳が開会式に出席。

北京は、史上最大規模の首脳外交の舞台に。
胡錦濤国家主席が、世界中の元首や首脳を次々に出迎える光景は、
中国に皇帝がいた時代の「朝貢外交」をも想起。

中国はアヘン戦争以来、西欧列強や日本の侵略を受けた屈辱の歴史。
五輪を、「中華民族の偉大な復興」を象徴する世紀の祭典にしたい、
との思いも中国国内には強い。

前回アテネ大会で、中国の金メダルは32個と、米国の36個に迫った。
中国が初の世界一になる可能性も。
だが、メダルの数で威信を示そうとするのは、五輪精神とは相いれない。

「一つの世界、一つの夢」が北京五輪の合言葉。
中国が、世界と調和していく新たな夢を実現するには、
3月のチベット騒乱で露呈した人権問題の改善、
報道の自由や民主化の加速、環境保全などが大事。
新疆ウイグル自治区で起きたテロ事件取材中の日本人記者らが、
武装警察から暴行を受けたのは極めて遺憾。

8日の北京は曇りがちで、開会式会場「鳥の巣」もかすんで見えた。
平和の祭典の成功を祈るとともに、中国の透明性向上に期待。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080808AS1K0800A08082008.html

0 件のコメント: