2008年9月28日日曜日

森を減らさない(中)カカオ農法改善 乱伐防ぐ

(読売 9月10日)

ユラーリ揺れながら歩を進めると、深い森に吸い込まれていくようだ。
地上30メートル、クワ科の高木など7本の幹に板を吊り橋状に架けた
「樹冠路」(1周330メートル)は、ガーナのカクム国立公園の人気スポット。
年間約8万人が訪れる。

環境NGO「コンサベーション・インターナショナル(CI)・ガーナ」の
オチアミ・アンパデュ・アギェイ前代表は、誇らしげに話した。
「珍しいチョウ、ダイアナザルなど希少野生動物、200頭以上のゾウもいる。
われわれが国立公園化を働きかけ、樹冠路はわれわれが造って、
地元のNGOが運営している」

8年前からは、地元住民向けのプロジェクトも始めた。
「公園の外周5キロ内には、140の集落があり、多くの農民がカカオを栽培。
耕作地拡大が森林の生態系を脅かさないよう、
しかも収穫が上がる道を探った」(前代表)。
四つの集落に実験農場を造り、専門家の協力も得て、
村人たちとカカオ栽培の改善に取り組んできた。
日本の情報機器大手、リコーも2002年から毎年250万円を支援。

カカオの実から取りだし、加工するカカオ豆は、ガーナの主要輸出品。
主に小さな農家が生産。

CIガーナ代表代理のヨー・オセイオウス氏によると、
カギは、日影の管理。
「木陰に入りすぎても、日光を浴びすぎても、病気になる。
病害虫にやられた兆候を早く見付けたり、化学肥料や農薬を使わない
方法も編み出した」。

8月は小雨期。
国立公園との境に近いボビ村を訪れた時、激しい雨に見舞われた。
カカオ農家の2人に、車の中で話を聞いた。

ゴドウィン・アチボーさん(50)は、「カカオの木が、幹が太く、枝振りも良く、
ぐっと健康そうになった。土も、砂色から黒か深い茶色に変わった。
昨年秋の収穫期には、多い木で、83個も実がなったんだ。
以前は、多くて20個だった」。

ジェームス・オットーさん(46)は、「今は苗を育ててから植えているけど、
以前は土にそのまま種をまいていた」。
カカオの収穫が倍増し、昨年は1008ドルに。
長男(17)は9月から高校生。「大学に行かせてやれるかも」。

「プロジェクトに加わる直前には、カカオが育たないので、
場所を変えようとしていたところだった」と、オットーさんは明かす。
カカオの収穫が落ちると、村の森の木を切り、畑に替えるという
古い耕作パターンは変わりつつある。

一瞬、土砂降りの雨がやんだ。
オットーさんのカカオ畑に駆け込み、写真を撮った。
秋の収穫を前に、いくつもの青い実がすでに重そうだった。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20080910-OYT8T00461.htm

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