2011年5月5日木曜日

復興への希望は(上) 震災50日、戸田公明大船渡市長に聞く

(東海新報 4月30日)

――3月11日以降の対応を振り返った上で、現在の素直なご心境を?

戸田 最初の3日間は、緊急対応モードを作ることに力を注いだ。
避難所を回り、住民の皆さんからさまざまな話を聞いた。
自分なりに要望をまとめ、部課長会議や国会議員、政府の方々に
ぶつけることを繰り返してきた。

市内の主な企業を回った中で、皆さん前向きに再開への活動を始め、
勇気づけられた。
市では災害復興局を立ち上げ、復興基本方針も発表。

自治体、自衛隊、日本国政府、海外からの支援隊などには、
感謝の気持ちでいっぱい。
世界的に注目された災害であり、教訓を今後のまちづくりに
生かしていかなければ、と感じている。

――現時点で、最優先で取り組むべき課題は?

戸田 被災地で事業再開するためのライフライン復旧が、非常に急がれる。
店舗兼住宅となっていた個人商店や個人事業主は、行き場を失っており、
再開への一歩を支えたい。

仮設店舗設置を国が支援しようとしている中、一刻も早く実現させたい。
空き店舗に移るのは限界があり、被災した大船渡町内に
仮設店舗を造ることも必要。
津波が押し寄せた縁辺部、がれき撤去を終えた土地が候補地に。

電気、水道の復旧は、とくに水産業で急がなければ。
魚市場はカツオ漁に合わせ、6月の営業再開を目指す。
氷、冷凍、加工の各工場も動き出し、漁業者も活動する。

避難生活が長くなるにつれ、住民の皆さんも生活の質に対する
不満感が出てくるはず。
仮設住宅の建設を急ぎたい。
父、母が亡くなった児童生徒のケアも重要。

――震災では、漁業や水産業全般で壊滅的な被害を受けた。

戸田 現在、漁業者は船を共同使用しながら動いているが、
少ない所得から始めるのはやむを得ない。
元に戻るまでの必要経費を支援する施策を、国を挙げて考えてほしい。

未来指向型として、生産体制を個人ベースから協業、企業ベースに
移行させることも、国が先導していい。

――失業者も増えている。
当面の雇用の場確保に加え、商工業再生に向けたビジョンをどう描くか?

戸田 国として、各事業主に震災による損失額を補填、
補助することを考えてほしい。
損害額を被ったままでは、非常に重い負担に。

復興計画を作る過程で、さまざまな分野で復興プロジェクトが出てくるが、
国支援と並行して、できるだけ早く着手したい。
スピード感を持って動き出せば、早期雇用は相当進む。

――国や県に対して、どのような施策を期待しているか、
民間や住民レベルで望んでいる支援は?

戸田 スピード感を出すための工夫をお願いしたい。
平時でも非常時でも、スピード感が大事。
補正予算が決まった段階で、各市町村への配分額が
即刻固まるような流れが重要。
復興特区というか、既存の法律や税制に縛られない
柔軟な運用も望みたい。

民間団体の皆さんには、被災者の生活の質を上げる支援を期待。
市内では、被災前から医療・介護分野の充実が課題の一つ。
緊急時で、もっと大変な状態になり、さらに支援を望みたい。

――浸水地域での土地利用は、今後どのように進めるべきか?
計画策定に向け、どのようなプロセスを考えているか?

戸田 津波が来ても死者が出ない、家が流されないまちづくりを、
国で支えてほしい。
「災害は忘れたころにやってくる」であり、仕組みとしての定着が重要。
市でも、災害危険区域指定や都市計画の用途変更を検討したい。

浸水域に住宅は建てない。
ただし生産、業務施設は建て続ける。
新たに建てる場合、避難所として使えるような構造を考慮。

浸水域にある既存建物を使って、事業を再開することはウェルカム。
将来、再建する場合、さらに災害に強い構造にしてほしい。
商店街では、店舗と住居は分離する形など、
安心・安全なまちづくりを目指していきたい。

いろいろな意見が出てくると思うが、市内の各地区や業界、行政、
市民の各代表、学識経験者の議論を経て、一つの方向性を出したい。
計画を策定する中、スピードは重視したい。

http://www.tohkaishimpo.com/

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