2008年7月4日金曜日

当世留学生事情(5)専門分野の日本語強化

(読売 6月21日)

大学で必要な能力に特化した日本語教育が進化している。
「いろいろな」は「様々な」。「だんだん」は「次第に」。
「リポート作成」のテキストは、話し言葉から書き言葉への変換が
練習問題になっていた。
「口頭発表」のテキストでは「一般的には」など、発表でよく使う表現が並ぶ。

独立行政法人・国際交流基金が、日本で大学生活を送る留学生向けに
2006年に開発したオリジナル教材。
「会話」のテキストでは、教授とのやりとりが中心。
「今よろしいですか」、「お手伝いしましょうか」など、普通の日本語教育なら、
上級レベルの敬語も登場。

東南アジア諸国連合(ASEAN)にバングラデシュを加えた11か国から
選ばれた18人が毎年、日本の大学院に進学する前に、
この教材を使って、同基金の研修施設、関西国際センターで
ゼロから日本語を学ぶ。期間は7か月。
文法学習は最低限にとどめ、必要な日本語を最短で学ぶことが目標。

研修生は、食堂や図書館を備えた宿泊棟で生活し、茶道体験や
地元の家庭へのホームステイ、京都、奈良、広島への研修旅行など、
日本理解を深める行事に参加。

「リポート作成は、理系と文系を分けて指導した方がいいのでは」。
3人の日本語教育専門員が、指導法について協議。
日本の大学院に進学した元研修生の声を聞きながら、
テキストを日々、刷新。

それぞれの研究テーマに合わせた個別指導のため、
専門的な語彙リスト作りや、研究分野に関する論文の読解指導も。
「カリキュラム作りのために、我々も担当する学生の専門分野の
勉強もしている」と日本語教育専門員の1人、野畑理佳さん(36)。

センターを訪れる元研修生から聞き取り調査も。
三重大学大学院に進んだインドネシア人留学生、ナワウィさん(31)は
「授業にしっかりついて行けるし、研究の準備が十分にできる」。
国際交流基金は、事業の柱の一つに外国人に対する日本語教育を
掲げており、関西国際センターは、日本に赴任予定の外交官や公務員、
若手研究者らに、それぞれの専門に役立つ日本語を教えてきた。

このノウハウを応用し、1996年から、日本に留学予定の学生に対し、
現地での日本語教育を手がけてきた。
最近では、学内での日本語教育に頭を悩ませる大学から
問い合わせが増えている。
同基金日本語事業部の嘉数勝美部長(57)は、
「多くの留学生を迎えたい大学には利用価値は高い」。

同基金では、海外での日本語教育拠点の設置も進め、
現地の大学と協定を結ぶなどして、31か国40か所まで増加。
こうした拠点でも、このテキストを使い、
日本への留学を考える学生を増やしたい。

留学生と大学双方の負担を減らすためにも、
短期間に必要な日本語を習得する仕組みは欠かせない。

◆語学教育拠点

英国のブリティッシュ・カウンシル(113か国213か所=2007年)や
ドイツのゲーテ・インスティテュート(83か国147か所=08年)。
04年から展開する中国の孔子学院も、69か国238か所と急増(08年)。
国際交流基金は、海外の日本語教育拠点を2010年までに100か所以上に。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080621-OYT8T00215.htm

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