2008年7月3日木曜日

コーヒーでつながる人の輪 「最悪」返上目指す 緊急連載企画「命つなぐために-自殺大国ニッポンのいま」5回続きの(4)

(共同通信社 2008年6月25日)

店員がカウンター越しに声を掛け、世間話に花が咲く。
「コーヒーもう1杯どう?」。何杯飲んでも、100円。

世界遺産の白神山地のふもと、秋田県藤里町に
火曜日の午後だけ開店するコーヒーサロン「よってたもれ」がある。
秋田弁で「寄ってください」という意味。
2003年の開店以降、不定期の移動式サロンも含め4000人以上が訪れた。

運営するのは、自殺予防を考える民間団体「心といのちを考える会」。
会長で住職の袴田俊英さん(49)は、店を「縁側のような場所」と表現。
農家の縁側でお茶を飲みながら、世間話をしていた昔のように、
誰でも集まれる場所を作ろうという発想から始まった。

店を訪れる客の話をじっくり聞き、
深刻な内容なら場所を移して相談に乗ることも。
つらい思いを抱えて涙を浮かべて来る客も、
一緒にコーヒーを飲むことで癒やされるようだ。

「機械化が進み、農作業が1人でできるようになったことで
『人のつながり』が切れ、精神的な不安定さが生まれた。
1人で悩まない状況を作ることが大切。
誰かに、『大変だ』と言える雰囲気をつくれば、自殺は少なくなるかも」。

店でくつろいでいた藤里町の村岡宏明さん(53)は、
「気軽に来られるオアシス。火曜になると、『行かねばな』と思う。
楽しみが増えた」とコーヒーを1口飲み、満足そうに目を細めた。

秋田県が、地域社会でそれまで「タブー視」されがちだった自殺問題を
正面から取り上げ、本格的な対策に乗り出したのは2001年度。

地域の保健師や開業医が、自殺の背景にあるとされるうつ病の兆候を
早期に発見し、専門医につなげるための研修などに力を入れてきた。
体の不調は、心の悩みが原因になっていることも多く、
かかりつけの内科医などに「目利き」をしてもらうのが狙い。

袴田さんらのような民間団体の活動もあり、07年の自殺者数は417人と
前年より76人(約15%)減少。
人口10万人当たりの自殺率は、発生地で集計する警察庁の統計では
山梨県を下回ったが、自殺者の居住地でみる厚生労働省の
人口動態統計では1995年から全国最悪が続いている。

「独り暮らしより、大家族の中で暮らしている高齢者の方が
『居場所がない』といった疎外感を感じやすい。孤独より孤立が問題」
と秋田県の担当者。
それでも手応えを感じているのか、
「『自殺率ワースト県』の返上はここ1、2年が勝負」。

※秋田県の自殺者

県内の2007年の自殺者417人のうち男性は309人、女性は108人。
年代別では、60代が66人で約16%、70代以上が111人で約27%、
60歳以上が全体の40%以上。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=76283

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