2008年9月1日月曜日

光熱フィルター:窓に施し、CO2排出を削減 従業員3人、小さな会社が世界を目指す

(毎日 8月25日)

福島市にある従業員3人の小さな環境資材メーカー
「フミン」(八木澤勝夫社長)が開発した「光熱フィルター」が注目。

窓ガラスに、酸化物をコーティングして、冷暖房費を節約する技術。
二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながることから、
環境省の環境技術実証事業の認定も受け、国内外に利用が広がっている。

「さあ、どちらが熱いか体感してみてください」。
新エネルギーの普及と省エネ拡大を目指す産学官連携会議。
約100人を前に、八木澤社長が光熱フィルターを披露。
八木澤社長が、2枚のガラスにライトを当て、透過光に手をかざして
比較するよう参加者に促した。

一方のガラスには光熱フィルターが施され、光の熱をほとんど感じず、
体験した男性は「こんなに温度が違うものか」と驚いていた。

光熱フィルターは、紫外線と赤外線を吸収する特殊コーティング剤
「伝導性金属酸化物」。
窓ガラスに吹き付けると、赤外線を約50%カットするため、
夏は室温を2~5度下げる効果。
冬は、暖房熱の遠赤外線を吸収してガラス自体が温まり、
室内の暖かさを逃さない。
冷暖房費が節約され、二酸化炭素(CO2)の削減。
均一に透明に塗布できるのが、同社の特許技術。

八木澤社長は02年、電話ボックスのガラスに、
この酸化物を塗ってボックス内の温度を下げていることを知り、
「窓ガラスに応用できる」とひらめいた。

最初は、スポンジで酸化物を塗っていたが、むらができる。
スプレーを使うと、霧状になって曇りが出てしまう。
そこで、スプレーの口径を1・5ミリと大きめにして、
温風を当てながら塗布する工夫をしたところ、
均一で透明に仕上がり、昨年、この方法で特許を取得。

同社と提携して工事を請け負う代理店は、
建設業者を中心に全国で65事業所に上る。
1平方メートル当たりの施工価格は、環境管理の国際規格
「ISO14001」にちなみ、1万4001円。
全国から注文が相次ぎ、これまでに窓ガラスを光熱フィルターで塗布した
施設は、学校や銀行など280施設。

シンガポールでも使われ、今後は海外展開も図る。
2月に、福島県の「第2回うつくしまものづくり大賞」を受賞。
6月、先進的な環境技術を第三者が実証する環境技術実証事業の認定。
光熱フィルターの普及を目指す新会社も、6月に誕生。

元地元紙記者の小林富久壽さんが、同市で起業した「プロジェクト・えこ」。
小林さんは、要望があれば自ら足を運んでスプレーする。
「未来から託された我々がやるべきことは、光熱フィルターを広めること。
高度成長の果実を享受し、自然を破壊してきた人間の義務」。

八木澤社長は現在、光熱フィルターの太陽電池への応用を検討。
太陽電池は、太陽光を利用して発電するが、
高熱に弱く、電力需要が増す夏場に発電力が低下。

「高熱に強い太陽電池を開発するのではなく、
あらかじめ熱をカットするという発想の転換。
クーラーの使用で、電力需要が伸びる夏に太陽電池で
たくさん電力を供給できれば、CO2排出量は確実に減るはず」。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/08/25/20080825ddm016040009000c.html

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