2007年10月2日火曜日

2つの新規遺伝子が関節リウマチのリスクに関連している可能性

(Medscape 9月5日)

関節リウマチ(RA)のリスクを増大させる可能性がある
遺伝子座および別の遺伝子が詳しく報告。

ヒト9番染色体上に存在する腫瘍壊死因子受容体関連因子1(TRAF1)
補体成分5(C5)はいずれも慢性炎症に関連。

2番染色体長腕(2q)上のシグナル伝達性転写因子4(STAT4)は、
T細胞のシグナル伝達に関与。

米国立関節炎・筋骨格・皮膚疾患研究所(NIAMS)臨床部長のDaniel Kastnerは、
「ヒトゲノム中の多数の有力な候補のうち、どれが自己免疫・炎症性疾患に
対する感受性をもたらすのかを検討するため、
特定遺伝子座における特定対立遺伝子と変異の関連を利用した」。

TRAF1-C5:ゲノムワイド研究

ゲノムワイド研究は、RA患者1,522例およびマッチした対照1,850例を対象とし、
North American Rheumatoid Arthritis Consortium(NARAC)および
Swedish Epidemiological Investigation of Rheumatoid Arthritis(EIRA)の
データセットを使用。

患者は、抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)に対する自己抗体陽性。
297,086の一塩基多型(SNP)を解析し、
「疾患との有意な関連」を示したSNPについては、
患者997例および対照1,777例において遺伝子型を特定。

9番染色体上のSNPは、すべてのサンプルにおいてRAに関連。
この領域には、慢性炎症に関連する遺伝子TRAF1、C5が含まれていた。

Robert S. Boas Center for Genomics and Human Genetics at the Feinstein Institute for Medical Researchセンター長である
Peter K. Gregersenは、「TRAF1は、腫瘍壊死因子[TNF]受容体を
介したシグナル伝達の阻害に関与しているので、非常に有力な候補。
また、TNFがRAの非常に重要な病因であることは明らか」。
RA治療を目的に開発された生物学的製剤の大部分は、TNF阻害薬。
また、C5切断が炎症性化合物を生成し、C5欠損マウスは炎症性関節炎に罹患しにくい。

STAT4:連鎖研究

RAリスク遺伝子を含む可能性が高い、2番染色体長腕上の領域を同定。
「精密マッピングを行った結果、STAT4がこの領域の主要遺伝子である」。

染色体2q領域内の13候補遺伝子の周辺にあるSNPに焦点。
RA患者1,620例および対照2,635例を対象としたSNP初回解析により、
領域を絞り、さらにRA患者1,529例および対照881例を詳細に検討。
また、全身性エリテマトーデス(SLE)患者1,039例および対照1,248例において
関連SNPを検討した結果、STAT4の1つのSNPが、
RAおよびSLEの両疾患に関連していることが判明。

マイナー(疾患関連)対立遺伝子は、
RA患者の染色体の27%、対照群の染色体の22%に存在。
SLE患者の染色体の31%、対照群の染色体の22%に存在。
リスク対立遺伝子がホモ接合体である場合、
この対立遺伝子がない場合と比較して、SLEの発症は2倍以上、
関節リウマチのリスクは60%増加。

「STAT4は、T細胞および他の免疫系細胞のシグナル伝達に
深く関与しているので、とりわけ興味深い。
インターロイキン2や1型インターフェロンを含むSTAT4経路が、
関節リウマチや全身性エリテマトーデスの発症機構に直接関与する」。

STAT4は、RAおよびSLEの両方に関連しており、
このことは、別のRA関連遺伝子PTPN22でみられる傾向
(1つの遺伝子が2つ以上の自己免疫疾患に関与している可能性)を裏付け。

さらに遺伝子が見つかる?

Gregersen博士は、さらに3~5のRAリスク関連遺伝子が見つかると予測。
「1型糖尿病のリスク遺伝子は、現在、約10~20見つかっているが、
RAについても同じことが起こるであろう」。

現在のところ、RA関連遺伝子は、
TRAF1-C5、STAT4、PTPN22、HLA領域、シトルリン化の制御遺伝子PADI4
(peptidyl arginine deaminase 4)の5つ。

RAの血液検査では、抗シトルリン抗体(抗CCP抗体)の検出を実施。
PADI4とRAの関連は、アジア系集団で明確だが、欧州系集団では不明確。
「この酵素には、5~6種類のサブタイプがあり、1番染色体の先端にある。
PADI4は、蛋白質中のアルギニンをシトルリンに変換する酵素で、
シトルリンが抗体の標的となる」。
抗CCP抗体は、診断ツールとして認識が高まっており、
最近では韓国人集団において同じSTAT4結果が得られた。

東京大学大学院医学系研究科アレルギー・リウマチ学の山本一彦、
東京大学医科学研究所ゲノム機能解析分野の山田亮による『NEJM』の論説は、
「さまざまな祖先の」集団を研究対象とすることの重要性を強調。

「PADI4の機能は、RA特異的自己抗体産生に密接に関連しており、
遺伝的変異と機能差の機能的関係を明らかにするために、
複数の分子生物学的研究が実施されている」。

「PADI4蛋白の増加によって、[自己]抗原のシトルリン化が促進され、
その結果、関節リウマチの最も特異的なマーカーである
抗シトルリン化ペプチド抗体が増加」。

RA関連変異は、「増加する集団もあれば増加しない集団もあり、
地域環境と相互作用して、疾患感受性に影響を及ぼすこともある。
現在、非欧州集団のデータは不十分であり、
ゲノムワイド関連研究時代におけるテーラーメイド医療は、
多くの民族のデータを含めた臨床研究が必要」。

研究室から臨床へ

ゲノムワイド研究と連鎖研究によって、RA遺伝学に関する情報が集められているが、
医療にはどのような影響が及ぶのか?

Gregersen博士は、「この情報の使用は、
疾患の病因に関与する経路を見抜くためには非常に重要」。
STAT4阻害マウスモデルの治療成功に言及した。

多数のRAリスク遺伝子をもつ患者は、同定できる可能性がある。
自己抗体検査と組み合わせて、リスクが非常に高い患者を同定できれば、
何らかの予防を行うことが可能に。
「抗体を有する人は非常にリスクが高く、将来RAを発症するリスクは20~30倍高い。
遺伝情報を利用することで、予測可能性を改善し、
リスクが高い人を疾患発症前に同定することができる」。

「薬剤に対する個人の反応性を予測するバイオマーカーを探索する
多くの研究が行われている。これらの遺伝学的所見によって、
患者をよりよく特徴付けることが可能になる」。

N Engl J Med. TRAF1-C5 study and editorial published online September 5, 2007. STAT4 study: 2007;357(10):977-986.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=54633

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