2008年1月8日火曜日

非常勤教授の急増は米国の学界の将来にとって有益か

(nature ASia-Pacific)


米国における終身雇用は様変わりした。
1975年以来、米国の大学・学部のポストの数は倍増したが、
終身ポストおよび終身コースにあるポストの割合は低下。


米国大学教授連合 (AAUP) が行った米国教育省データの解析によれば、
フルタイムとパートタイムを含めた一時的なポストである
「非常勤 (adjunct)」教授は、かつて大学では少数派であったが、
現在では大半を占めている。
1975年に、非常勤教授は米国の学部の43%を占めていたが、
2005年には教授ポストのうちのほぼ70%

AAUP の女性広報官Gwendolyn Bradley 氏は、
短期契約に基づくパートタイム労働力へのこのようなシフトにより、
米国の高等教育の質が低下し、
学問的な職業の選択から人々が遠のくことになりうる、と。

非常勤スタッフは、終身スタッフおよび終身コースにいるスタッフより
給料がずっと少なく、通常給付金を受けられず、
また事務所スペースや事務的な支援にもありつけない場合が。

「質の高い高等教育の維持に関わる転換点に。
それは、パートタイムスタッフの適格性の問題ではなく、
彼らが支援を受けられないため」。
公立大学向けの州予算の減少が、状況をさらに悪化。

しかし、この動向は見過ごされている訳ではない。
17万人の学部メンバーを代表する米国教員連盟
(American Federation of Teachers)は11の州にて、
この不均衡を是正するための法案を起草。

学部課程の75%を終身職員および終身コースにある職員に担当させること、
フルタイム教員の給料に比例した給料を支払うこと(給付金も含め)、
非常勤スタッフにフルタイムのポストへの道を開くこと。
既にこれらを認識している大学もある。

アナーバーのミシガン大学は、非常勤スタッフの給料と給付金を増額。
ニュージャージー州のラトガース大学は、この夏の労働争議を受けて
終身コースのスタッフを100名雇用すると公約。


しかし、教育の質、魅力ある仕事の選択肢として、競争力を維持するために、
米国の大学にはより広範な制度全体に及ぶ変革が必要。

Nature Vol. 450, P. 755, 28 November 2007


http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=65

0 件のコメント: