2008年1月9日水曜日

エビさんの食べるスポーツ:生きるのは面倒か=海老久美子

(毎日 12月10日)

意外に思うだろうか、それとも納得するだろうか?
アスリートには、食事に対して面倒くさがり屋が少なくない。
もちろん、意識の高い選手もまた少なくないが。

私が経験してきたアスリートの面倒くさがりぶりは、こんな感じだ。
手巻き寿司、鍋、果物の皮、セルフサンドイッチ、パンのトースト、
お湯を沸かす、缶切り、大皿盛り、スープをよそうこと、
骨付きの魚や肉、自分で調味、硬いもの・ぼそぼそするもの……。

なんでこんなことがと思うが、彼らには彼らなりの理屈があったりする。
もっとも、そのほとんどは言い訳だが。

傾向を見ると、ちょっとした「ひと手間」が、
イコール、面倒くさいになっているようだ。
手巻き寿司や鍋、サンドイッチは、自分の好きなものを好きな風に
組み合わせるから楽しいしおいしいのだし、
湯沸かしや缶切りに至っては、それをしなければもはや手に入らない。

アスリートが面倒くさがるひと手間は、摂れる栄養素を増やしたり、
食事にゆったりしたリズムを作って消化を助けるという役割も担っている。
すべて整えられたものを与えられているだけでは、小さな子供と同じ。
強く生き抜こうという意志が感じられない。

食べることは、生きていくうえでもっとも基本的なことのひとつ。
競技力というのは、生活力があってこそ養える。
アスリートは、自分の可能性を切り拓いていく強い意志を持っている。
体を作ってくれる食べ物への能動的なひと手間なんて、
きっと簡単なことのはずだ。

海老久美子・管理栄養士、博士(栄養学)、国立スポーツ科学センター

http://mainichi.jp/life/health/chie/news/20071210ddf035050007000c.html

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