2008年3月3日月曜日

科学者はどこまで社会にかかわるべきか

(サイエンスポータル、2月25日)

NPO法人サイエンス・コミュニケーションの発行するメールマガジン
「SciCom News」巻頭論説で、春日匠氏が、1848年に設立された
米国の非営利団体AAAS(全米科学振興協会)が果たしてきた
役割について書いている。

春日氏は、「科学技術コミュニケーション」に関する日米の違いについて、
「ノンアカデミック・キャリアを選ぼうとした瞬間に、
指導教官から、『じゃあ博士号はいらないね』と言われたり、
指導がいい加減になるというのはよく聞く話。
自分の分野を理解し、博士号を持った議員、弁護士、ジャーナリストが
活躍することが、自分の研究分野にどれだけエンパワーメントになるかを
考えれば、そういう可能性を自分から封じてしまうのは馬鹿げている」

日本の科学者たちが閉鎖的であることの例として挙げている。
米国の科学者・団体は、なぜ社会的なつながりを重視しているのか?

春日氏の主張の紹介。
アメリカでは、宗教右派が政界に影響力を持ち、
学問の自由に対して抑圧的であると見なされている。
科学者たちは、常に学問の社会的意義を問い直し、表明する必要性。
特に、進化論は宗教右派と科学者の抗争の最前線であり、
AAASでも大きな議論が交わされていた」、

人権や社会的利益を追求することの見返りが存在している側面も。
アフリカの問題などは、世界最大の非営利財団である
ビル・メリンダ・ゲイツ財団が積極的に支援。
第三世界の健康問題には大きな予算がつく。
研究開発費が、(企業による営利活動以外は)国費に限られ、
研究費の分配も政府による戦略的な配分か、割り当てられた予算を
科学者たちで分配する科研費に限られている日本では考えられない」

米国と日本の科学者では、モチベーションが異なるので、
「科学コミュニケーション」などといっても…、と話は続く。
「アメリカでは、ジャーナリストや政治家、法律家、慈善事業家たちを
科学のシンパにしなければいけないというモチベーションが働くのに対し、
日本では研究費にアクセスする権利を持った同業者たち以外のものを
議論に参加させまいという力が働くのでは?」

昔に比べ、社会に向けて発言するのを嫌がらない科学者たちも増えてきた。
そんな感想を、年配のジャーナリストたちは抱いているのでは。
いや、いまのような生ぬるい個別の活動では駄目。
「若手の自然科学者に資金を提供して、
政策フェローとしてワシントンの各組織に送り込む」。
日本の科学者団体が積極的な活動を展開する時代が、
日本にもいつか来るだろうか。

http://scienceportal.jp/news/review/0802/0802251.html

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