2008年3月7日金曜日

輝く…「心の病」抱えた若者たち 自らの心境、曲に乗せ 音楽ライブ

(毎日 2008年3月2日)

うつ病、統合失調症、パニック障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)。
「心の病」を抱えた若者たちが所属する新潟市の芸能プロダクション
「K-BOX」の音楽ライブが人気。
バンド演奏や弾き語りを披露しながら、自分の病状もわかりやすく紹介。

ライブ会場は毎回、独特の雰囲気に包まれる。
ひきこもりの心境やカウンセラーの言葉を、曲に乗せて歌う若者たち。
うつ症状で現れた妄想の世界も、そのまま表現すれば一つの「作品」

主宰は、イラストレーターの男性、Kacco(カッコ)さん(40)。
絵をきっかけに、5年間のひきこもり生活から脱した経験を持ち、
「自分のような若者の自立を助けたい」と04年にプロダクション設立。
「心の病」を持つ約20人が所属、音楽、イラスト、詩などを提供。

月例ライブを始めて1年。
外出もままならない「病」ゆえ、
はじめはステージを「ドタキャン」するメンバーも多かった。
だが、回を重ねるうちに、ライブという目標に向けて
体調を自己管理できるように。
自信をつけ、アルバイトを始めた人も。

「ステージに立って、人の視線に対する怖さが薄れた」というのは、
高校まで不登校だったうつ病の歌手、Wattan(ワッタン)さん(28)。
うつ病でギター弾きのコウキさん(29)は、
「同じ境遇の仲間は大切。一人は楽だけど、新しい発見が少ないとわかった」。

常連客も増えた。
2度目という会社員の女性(35)は、
「病気でなくても自己表現は難しいのに、みんな一生懸命ですごい。刺激になる」。
Kaccoさんは、「誰でも心の病気になる可能性はある。
ライブをきっかけに偏見がなくなれば」と願う。

「輝いてアン・エンジェル、厚い殻を脱ぎすて、見守ってアン・エンジェル、
肩の力抜いてよ、ひとりぼっちじゃ苦しいだけだよ--」

金髪に大きな目が印象的な女性、Kuu(クー)さん(28)。
作詞した歌をステージで披露する堂々とした姿からは想像できないが、
今もうつ病などと向き合いながら生活。

14歳の時、いじめや転校をきっかけに心身症と診断。
思ったことを言葉や行動に表せず、体中が腫れあがる。
「おばけ」とからかわれた。
親が病気を認めたがらず、高卒後は別居してひきこもった。

薬を「ラムネ菓子のように食べる」日々。
摂食障害で、体重は36-66キロを行き来した。
睡眠薬を大量に飲んでアパートの2階から飛び降りたことも。

2年前、入院先で知り合ったKaccoさんに誘われ「K-BOX」を訪ねた。
「自分のような病人が何人もいる場所は初めてで驚いた」。
人に伝えられなかった思いを詩にしたら、メンバーが歌にしてくれた。
マイクを通して声を響かせながら、「やっと自分を表現できた」。

音楽を支えに、生活が変わりつつある。
体調を崩せば歌えないため、我慢しながら食べ物の摂取量を調整。
週1~2回のレッスンと通院時には、外出できるようになった。
ライブ後はストレスで1週間動けなくなるが、
「うつ病は焦っても仕方がない」と受け入れている。
「プロでなくても、歌を歌って食べていきたい」と目標。

先月、次のライブ会場となるNEXT21に下見に行った。
近くに住んでいながら、実に10年ぶり。
同世代の若者が行き交う雑踏に足がすくんだが、すぐ自分に言い聞かせた。
「これも新しい一歩。私は、一歩進んだ病人になるんだ」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=68743

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