2008年3月8日土曜日

暖かな破局:第3部・削減を阻むもの/1(その2止) バイオ燃料で規格争い

(毎日 3月4日)

政府は、国内排出量取引に向けてかじを切った。
福田首相の政治決断だが、
政治がいまだに省庁の対立を抑え込めない。
温暖化対策の現場にも、縦割り行政の弊害が影を落としている。

「うちは、悪いことは何にもしてへん。国の事業に協力しただけ」
大阪府大東市のガソリンスタンド、村川商会野崎給油所で、
所長の村川悠治さん(67)がため息。
店は、国内大手ブランドの看板を掲げていたが、
昨年10月に下ろさざるを得なくなった。
温暖化対策として、ガソリンに3%のバイオエタノールを直接混ぜる
「E3ガソリン」の取り扱いを始めたため。

京都議定書では、バイオエタノールは温室効果ガスの排出がゼロ。
環境省は、E3を試験的に販売する実証事業を始めた。
村川商会は、6カ所ある協力店舗の一つ。

ところが、石油元売り大手で構成する石油連盟は、
バイオエタノールを加工した液体燃料「ETBE」を混ぜた
別方式のガソリンの販売を始めた。
「直接混合は、自動車部品を腐食させる恐れがある」、
E3販売店には、ガソリン供給やブランド名の使用を拒んでいる。

村川さんの店も、大手以外からのガソリン調達を余儀なくされ、
大手ブランド名のカード会員も失った。

環境省は、「E3を使ってもエンジンに影響はない」と言うが、
石油連盟を所管する経済産業省は、
「規格は市場が決める。経産省の役割ではない」と、仲裁を拒否。

沖縄県宮古島市は、特産のサトウキビからバイオエタノールを作って
島内利用のガソリンに直接混合する「バイオエタノール・アイランド構想」。
小泉純一郎元首相の音頭で始まり、国がエタノール生産設備に補助金。

しかし、石油連盟はここでも協力を拒んでいる。
小泉元首相は先月、現地を視察し
「抵抗があろうと押しのけてやらないとだめだ」と小泉節で批判したが、
石油連盟は「抵抗勢力」のまま。

政府の京都議定書目標達成計画は、石油換算で年50万キロリットルの
バイオ燃料を調達する目標を掲げるが、石油連盟が確保する
21万キロリットル相当のETBEしか導入のめどは立っていない。

議定書が採択された97年から10年余り。
日本は、環境税や国内排出量取引導入を巡って環境、経産両省が対立、
具体的施策が遅々として進まなかった。

施策を導入済みの欧州に比べ、温暖化対策で大幅に後れをとった結果、
06年度に国内で排出された温室効果ガスは90年度比6・4%増。
日本は5年間、年平均の排出量を同6%減らさないといけないが、
達成は厳しい状況。

両省は、排出量取引についても、既に主導権争いを始めている。
いずれも、独自の検討会や研究会を設け、
北海道洞爺湖サミットまでに方向性をまとめる方針。
両省は、「検討会にあっちの省は呼ばない。首相を支えるのは我々だ」と、
ライバル意識をむき出しに。

省益ではなく、国益をどう確保するのか。
政治の主導権が、いまこそ問われている。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080304ddm002040006000c.html

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