2008年7月16日水曜日

熱中症:屋内でも多発 患者の3割、重症者の6割/高齢者は特に注意

(毎日 7月11日)

◇気温35度超すと危険
 ・めまい→体冷やし水分、塩分
 ・吐き気→すぐに病院へ搬送

蒸し暑い夏に気をつけなければならないのが、熱中症。
地球温暖化や都市部の気温が高くなる「ヒートアイランド現象」の影響で、
発症の危険性は高まる。
「重症なら死に至る。甘く見てはいけない」と専門家は警告。
予防法や応急措置を知り、夏を元気に乗り切りたい。

体がほてり、汗が止まらない。
ペットボトルの水を一気に飲むと、逆に寒気がしてきた。
気分は悪く、めまいがし始めた。

私が4月、炎天下のベトナムで2時間取材した後に経験した症状。
当時の気温は30度前後で蒸し暑かった。
日陰で休息しながら水分をとり、汗で失われた塩分を含む食事をすると、
大事に至らずに2時間ほどで回復。

帰国後、みやさか内科医院(東京都)の宮坂隆院長にこの話をすると、
「軽い熱中症だったのでしょう」。

◆見分け難しく

熱中症とは、暑さで体温を一定に保てなくなり、体内の水分や塩分の
バランスが崩れて異常が表れた状態を指す。
「熱失神」、「熱けいれん」、「熱疲労」、「熱射病」とも呼ばれ、
医師でも緊急性が区別しにくい。
現在では、軽い症状から順に1、2、3度と分類。

人の体温は通常、36~37度の狭い範囲。
暑くなれば、自律神経の働きで、皮膚に血液を集めたり、汗をかいたりして
体温の上昇を防ぐ。
蒸し暑い夏には、体温調節の機能が追いつかず、体に熱がたまる。
熱中症の「準備段階」。

この段階を過ぎた1度では、めまいや立ちくらみなどの症状
すぐに涼しい場所に移動させて体を冷やし、水分と塩分を与えることが必要。
なかなか改善しなかったり、吐き気やけいれんなど症状が出てくれば、
すぐに病院に搬送しなければならない。

有賀徹・昭和大教授(救急医学)は、「搬送の際、付き添いの人が
熱中症になった当時の気温や行動、既往症などを医師に伝えると
適切な診断と素早い処置ができる」。

◆体力低下時も

宮坂さんは、「高齢者は冷房が苦手。体温の上昇に気づかないことも多い」。
本人や周囲が風邪と勘違いして処置が遅れる場合があり、
「夏季に急に食欲がなくなったら、熱中症を疑ってほしい」。

5歳以下や肥満の人、睡眠不足の人は、周囲の環境への適応力が落ち、
熱中症になりやすい。

熱中症は、太陽が照りつける屋外で起こると考えられがち。
しかし、室内で全患者の約3割、重症者の約6割が発症。
「暑く蒸した換気のない室内で、アイロンをかけたり、台所で料理をしたり
する場合には要注意」と警告。

体が暑さに慣れていない時の発生が多く、梅雨明け後の約1週間に目立つ。
1日では、気温が高くなる午前11時~午後3時が危険時間帯。

◆温暖化で北上

温暖化による気温の上昇で、熱中症の危険性も高まりそう。
昨夏は、東京都と17政令市で熱中症で搬送された患者数が、
過去最多の5102人。

今後、北海道や東北地方でも熱中症発症のリスクが高まるとして、
エアコンのない世帯向けに、一時避難所の設置を提案。

国立環境研究所の小野雅司・総合影響評価研究室長は、
「熱中症で年間300~400人が亡くなっている。
最高気温が35度を超えると、熱中症のリスクが高まる。
高齢化社会を迎え、お年寄りへの支援体制に力を入れるべき」。
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<熱中症の重症度と対処法>
重症度1
症状
1)めまい、立ちくらみがある
2)筋肉のこむら返りがある(痛い)
3)ふいても汗が出てくる
4)頭ががんがんする(頭痛)
対処法
1)水分、塩分を補給する(塩分も補えるスポーツドリンクが最適)

重症度2
症状
1)吐き気がする・吐く
2)体がだるい(けん怠感)
3)意識がない         
対処法
1)足を高くして休む
2)水分、塩分をとる(自分でとれなければすぐ病院へ)

重症度3
症状
1)体がひきつける(けいれん)      
2)呼びかけに対し返事がおかしい     
3)まっすぐに歩けない・走れない
4)高い体温である
対処法
1)水や氷で冷やす(首、脇の下、足の付け根)
2)すぐに救急隊を要請

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/11/20080711ddm013100115000c.html

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