2008年7月17日木曜日

当世留学生事情(14)受け入れ家庭は「団塊」

(読売 7月4日)

留学生のホームステイ拡大は、団塊の世代が鍵を握る。

東京都荒川区のマンションの台所で、主婦長橋シズエさん(58)が、
米国から上智大学に留学中のケイティーさん(20)に、
「もうちょっと細かくね」と優しく声をかける。
ケイティーさんは、うなずきながら包丁で細かく刻んだ大葉を
マグロの刺し身にかけた。長橋さんの家で、しばしば見られる光景。

ケイティーさんは3月から、長橋さん方にホームステイ。
長橋家は、シズエさんと夫の会社員康幸さん(57)、長女裕子さん(30)の
3人家族。
長男が結婚して家を出て余った部屋を、ケイティーさんに提供。
シズエさんが趣味で通っていた英会話学校の教師に勧められ、
「家の中で英語の勉強が出来ればいい」と軽い気持ちで始めた。

入居直後、ケイティーさんは夜遅く帰ることもしばしば。
「預かった以上、自分の娘と同じ。心配で胃が痛くなって病院に行くほど」
今は、遅くなる時には連絡することに。

ケイティーさんを受け入れてから、食事の時間の家族の会話が増えた。
週末には、鎌倉や浅草へ一緒に出かけることも。
「今は私1人で何でもやるので大変だが、楽しい。
夫が定年退職すれば、助けてもらえるのでもっと楽に」。

一家とケイティーさんを結びつけたのは、
留学支援会社「サクシーオ」(東京都港区)。
日本人留学生の海外での支援が事業の中心だったが、
2年前から国内事業を始めた。
狙いは、大量退職が始まった団塊の世代。
時間があり、子供が独立して余った部屋も利用できる。
英語も学べるし、老後の収入にもつながる。

同社では受け入れ家庭に、1日2食付きで1日2000円の謝礼を用意。
日本語、習字、生け花などの日本文化を教えた場合には、
1時間に1000~3000円を支払う。

同時通訳者の鳥飼玖美子さん(立教大教授)は、
「ホームステイは日本の生活を知り、日本を本当に理解する
外国人を増やす上で最も重要」
「海外では、有償のホームステイも広がっており、
老夫婦が定期的に受け入れる例も多い。
日本の団塊の世代は、受け皿となりうる。
米国でも、受け入れ家庭への減税措置があり、
日本でも費用を必要経費として認めるようにすれば、
受け入れ家庭は増えるのでは」。

大学を通じて、約130人をホームステイさせている関西外国語大学では、
自身や子供がホームステイを経験した家庭の受け入れが多い。
それ以外の家庭に拡大することが課題。
国際交流部の橋本美佐子課長補佐は、
「日本では、客はきちんともてなさねばという考えの人が多く、
留学生の受け入れをためらう一因になる。
家族の一員として、ありのままを出してもらえればいい」

ホームステイを増やすために、行政の取り組みとともに、意識改革も必要。

◆ホームステイは1000人前後

日本学生支援機構によると、2007年5月1日現在、
留学生の宿舎は民間宿舎・アパートが77.1%。
大学が設置する宿舎13.1%、大学の寮4.4%が入居。
3か月以上ホームステイする留学生は818人(0.7%)。
ここ数年1000人前後で、1%に満たない状態。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080704-OYT8T00179.htm

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