2010年10月20日水曜日

インサイド:五輪ボイコット30年・第4部 「スポーツ立国戦略」の課題/2

(毎日 10月6日)

文部科学省のスポーツ立国戦略案を巡り、JOCに波紋が広がった。
独立行政法人「日本スポーツ振興センター(NAASH=ナッシュ)」が、
スポーツ界全体の連携・協働の「中核的な役割」を担うと
位置づけられたため。

旧文部省から補助金カットをちらつかされて、
80年モスクワ五輪参加を断念した経緯もあり、
JOCには政府がNAASHの権限と予算を強化し、
選手強化の主導権を握ることへの警戒感がある。

JOCや日本体育協会の反発を受け、8月26日に最終発表された
スポーツ立国戦略では、「中核的な役割」という文言は外され、
「スポーツ界への支援のための中心的な機関」と修正。

スポーツ団体には、「公的資金を受給するにふさわしい」との表現で、
ガバナンス(組織の統治)の強化を求め、JOC理事の一人は、
「スポーツは、民間団体であるJOCや体協による自治だったが、
今までと違う方向になりつつある」

◆JOCへの補助減額

NAASHは、03年10月、日本体育・学校健康センターから移行した
文科省所管の独立行政法人。
スポーツ振興くじ(toto)の実施主体であり、理事には文科省と
旧大蔵省出身者が名を連ねる。

国立競技場などのスポーツ施設のほか、スポーツ医科学の研究を行う
国立スポーツ科学センター(JISS)と、トップ選手の練習拠点である
味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)を運営。
totoの収益金やスポーツ振興基金の運用益により、
各団体への助成事業を行う。

NAASHは、メダル有望種目を支援する文科省の
マルチサポート事業でも、中心的役割を担う。
政府の事業仕分けで、JOCや体協への補助事業が減額される一方、
マルチサポートは大幅増額となり、JISSを運営するNAASHと
筑波大に事業が委託。
NAASHはアスリート支援、筑波大は研究開発という役割分担。

文科省OBは、「JOCや体協を通した補助事業に対し、
文科省が主体となる委託事業の比重が増し、
国が描く事業をより強力に推進できる」

マルチサポートは、主に情報・医科学などの分野での後方支援を
目的にしており、選手の合宿費や遠征費まではカバーしていない。
依然、多額の負担をしいられる競技団体は多く、
現場からは、「本末転倒だ」と不満の声も。

◆高まる国への依存度

文科省の芦立訓・競技スポーツ課長は、
「国の委託事業であるマルチサポートは、スポーツ界が(選手強化を)
国策としてやってくれ、というところからスタートしている」、
「『民』とか『官』ではなく、アスリートをどうサポートしていくのかが大事。
垣根を低くしてやっていきたい」

かつて五輪はアマチュアの祭典だったが、プロ参加解禁に伴い、
国際的な競技水準と注目度が飛躍的にアップ。
国策として、スポーツ強化に取り組む国が増えた。
国への依存度が高まれば高まるほど、コントロールも受けやすくなる。

国の支援とスポーツ界の自治のバランスをどう保つのか。
政府与党が、スポーツ立国戦略を踏まえて、
来年の通常国会で成立を見込んでいるスポーツ基本法でも、
大きなテーマになってくる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/10/06/20101006ddm035050005000c.html

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