2010年10月21日木曜日

受動喫煙の被害が深刻です

(2010年10月11日 毎日新聞社)

受動喫煙の影響を調べている厚生労働省の研究班は、
年間に受動喫煙が原因で、肺がんや心臓病で死亡する
約6800人の成人のうち、「半数以上の約3600人は、
職場での受動喫煙が原因」との推計値を発表。

職場の受動喫煙防止は現在、健康増進法に基づく
事業者の努力義務にとどまっているが、
厚労省は労働者保護の観点から、受動喫煙防止の義務化を
労働安全衛生法に明記する意向。
来年の通常国会に、同法改正案を提出することを目指す。

職場での受動喫煙問題に取り組む岡本光樹弁護士は、
常に10~20件の相談を抱えている。
「建設事務所の職場は、約20人の従業員がほとんどが喫煙者。
分煙さえされず、このままでは体が参ってしまう。
家族を抱え、会社と対立するわけにもいかない」

昨年11月、50代の男性会社員からの相談。
この男性のように、小規模の職場で、受動喫煙被害を訴える人は多い。

厚労省の調査(07年)では、同省のガイドラインに沿って、
禁煙か分煙の対策を取っている事業所は全体の46%。
規模別にみると、従業員5000人以上の大企業では100%、
10~29人では44%。
小規模の事業所ほど、対策が遅れている実情が浮かんだ。

不十分な分煙に、苦しむ人もいる。
不動産会社に勤める40代の女性は、頭痛などの症状が表れ、
今年4月、「受動喫煙症」と診断。
職場は、喫煙スペースと禁煙スペースに分かれてはいるものの、
煙が遮断されてはいなかった。
女性は診断書を会社に提出し、職場は禁煙に。
だが、女性は今も休職中。

職場での受動喫煙に苦しむ人の中には、
勤務先の提訴に踏み切る人もいる。
多くは、上司に「大げさだ」などと言われ、泣き寝入りしたり、
退職や休職に追い込まれる人も少なくない。

厚労省は今年2月、健康増進法に基づき、官公庁や飲食店など
不特定多数の人が利用する公共的施設は、
原則全面禁煙とする通知を出した。

努力義務規定に過ぎず、岡本弁護士は、
「まだ認識の低い企業も少なくない」と指摘。

厚労省は、同法ではなく、労働安全衛生法で規制を強化し、
「義務付け」に格上げ。

従来の規制対象が「公共の場での受動喫煙」に対し、
「従業員の受動喫煙」に着目した本格的な喫煙規制といえる。

◇飲食店、対応難しく

政府が規制強化に乗り出す中、飲食店など客が喫煙する職場は
難しい対応を迫られる。

厚労省は、
(1)浮遊粉じんの空気中濃度を基準以下に、
(2)濃度が基準以下になる十分な換気量の確保――のいずれかを
義務づける方向で検討。
排気設備の取り付けなど、抜本策が必要になりそうだ。

居酒屋やバーなどを全国展開する、ある大手飲食チェーンは、
条例で受動喫煙防止が義務づけられている
神奈川県内の一部店舗を除き、分煙で対応。
法改正が実現すれば、全面禁煙か施設改修を迫られかねない。

同社は、神奈川県内の対応だけで数百万円かかったといい、
担当者は、「お酒にたばこはつきもの。
さらに設備投資するのは苦しく、全店舗での禁煙は難しい」

規制は、同省の専門委員会が示した「1立方メートル当たりの
浮遊粉じん0.15mg以下」が有力。
世界保健機関(WHO)や米国の基準より4~6倍も緩く、
「不十分」と指摘する専門家も多い。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/12/126732/

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