2010年10月18日月曜日

インタビュー・環境戦略を語る:新日鉄エンジニアリング・羽矢惇社長

(毎日 10月11日)

新日本製鉄で、製鉄用の設備などを製造する
エンジニアリング事業部が、06年に独立して発足した
「新日鉄エンジニアリング」。
製鉄過程で出るごみや熱エネルギーを有効利用し、
リサイクル省エネ設備の開発などに力を入れる。
羽矢惇社長に、環境問題への取り組みを聞いた。

--鉄鋼業界では、地球温暖化防止に向けた
さまざまな取り組みが進んでいる。

◆中国やインドなど、新興国の経済的発展に伴い、大量の資源を使い、
エネルギーを出す製鉄過程での資源の有効活用や省エネ化は、
世界の鉄鋼業界の大きな課題。
我々は、新日鉄のエンジニアリング事業部として、
鉄を作るプロセスに深くかかわってきた。
そこで培った技術をベースに、環境対応型の商品開発に取り組んでいる。

--具体的には?

◆製鉄関連では、従来原料として使えなかった製鉄過程で出る
粉鉱石などの製鉄ダストを、石炭と一緒に加熱処理などすることで、
還元鉄という鉄原料を製造。
製鉄ダストから亜鉛を取り出し、リサイクルする回転炉床炉(RHF)を製造。
これまでに、中国や韓国などの企業から計9件の受注があった。

原料のコークスを精製する過程で出る熱エネルギーを回収し、
製鉄所内の発電などに活用するコークス乾式消火設備(CDQ)も製造、
日本と中国合わせて、計79基を納入。

--製鉄分野以外での取り組みは?

◆一般家庭で出るごみをコークスと一緒に燃やし、
アスファルトと混ぜることで、路盤材などに使えるスラグや、
クレーンのおもりなどに使えるメタルを産出する
廃棄物溶融処理システムを開発、
日本各地の自治体のごみ処理施設で使われている。

有害なポリ塩化ビフェニール(PCB)の廃棄物を、無害化処理する
日本で初めてのPCB廃棄物処理施設の建設にも携わった。
廃タイヤを熱分解し、出てきたガスや油分などを
再利用する施設も作っている。

--2020年までに、温室効果ガス排出量を1990年比で
25%削減するとの政府方針をどう思うか?

◆個人的には、各社が実際に排出量を減らす方向に
努力していることにこそ価値があり、環境保全に貢献するための
仕事をしている我々も、もちろん最大限できることはやっていく。
25%削減という数字については、本当に実現可能性がある数字なのか、
それが日本の利益に見合う数字なのか、
他国と比べた際の公平性はどうかなど疑問。
政府には、企業の声をしっかり踏まえ、日本の国益に見合った
方向付けをしてもらうことを望む。
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◇はや・まこと

68年、東大法学部卒。旧富士製鉄(現新日本製鉄)入社。
機材部長、常務、副社長などを経て、06年7月から現職。64歳。

http://mainichi.jp/select/science/news/20101011ddm008020020000c.html

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