2010年10月23日土曜日

インサイド:五輪ボイコット30年・第4部 「スポーツ立国戦略」の課題/5止

(毎日 10月9日)

文部科学省所管の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)と
国立スポーツ科学センター(JISS)は、JOC傘下の競技団体の
アスリート向けに設立。
厚生労働省所管の障害者スポーツの利用は、想定されていなかった。

競泳で過去5回、パラリンピックに出場した河合純一(35)が、
08年北京パラリンピックの直前に、NTCの宿泊施設とJISSの
プール使用を申し出た際、なかなか許可が下りなかった。
管理責任の所在を巡って、たらい回しにされた。
その中で、パラリンピックは厚労省の管轄だからという話も聞いた

結果的に使用が認められたが、
スポーツ行政の縦割りの弊害を象徴する出来事だった。

◆複数にまたがる窓口

スポーツ行政は、
(1)競技・地域スポーツや学校体育は文科省、
(2)障害者スポーツや国民の健康増進は厚労省、
(3)スポーツ施設が絡む都市公園整備は国土交通省、
(4)フィットネスクラブなどスポーツ産業は経済産業省--と、
複数の省をまたいで行われている。

スポーツ振興くじ(toto)は文科省所管、
公営ギャンブルは競馬が農林水産省、競輪は経産省、
競艇は国交省に分かれ、収益金からの助成や補助に
それぞれ法律の規定がある。

文科省は「スポーツ立国戦略」で、国のスポーツ行政の組織について
「『スポーツ庁』等の在り方について検討する」と言及。

スポーツ界には、スポーツ政策の一元化と予算確保への期待から、
スポーツ庁(省)の創設を求める声が根強い。
JOCは、「長期的な視野に立った財政支出計画を可能にし、
効率のよいスポーツ振興を実施するために、トップ選手の強化、
国民のスポーツ振興、障害者スポーツなど、
多様なスポーツ行政を統一することが望ましい」と要望。

実際には、ハードルが高い。
文科省OBの一人は、「文科省は、自分の省の外局として
スポーツ庁を置きたい。
その場合、他の省がスポーツ関連の権限を手放さない。
スポーツ行政を一元化するには、首相直属の内閣府に置くのがいいが、
文科省は手放したくない。
役所には、権限を守ろうとする体質がある

◆文科省だけでは限界

スポーツ立国戦略も、文科省が単独で策定した以上、限界がある。
文科省幹部は、「霞が関的な仁義から、他省庁の所管に関しては
かなり遠慮した」と明かす。
NTCのパラリンピアンの利用についても、
「検討する」という表現にとどめられた。

パラリンピックの代表選手は、五輪代表以上に支援が手薄。
日本障害者スポーツ協会の調べでは、06年トリノ、
08年北京パラリンピックに出場した選手の強化費の
自己負担は、年平均111万円に達した。

みんなの党から参院選に立候補(落選)し、
スポーツ環境の充実を訴えた河合は、
「スポーツ立国戦略の議論は、本来は内閣府でやるべき。
他省庁への越権行為になるといってやらないなら、
初めからしないほうがいい。
スポーツ庁も、今の文科省スポーツ・青少年局を庁にするのでは、
何も変わらない」

スポーツ行政の複雑な組織構造。
そこに横たわる権限の壁は、簡単には崩れそうにない。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101009ddm035050097000c.html

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