2010年10月21日木曜日

インサイド:五輪ボイコット30年・第4部 「スポーツ立国戦略」の課題/3

(毎日 10月7日)

文部科学省が発表した「スポーツ立国戦略」の中で、
年代を問わず、多種多様なスポーツを楽しめる
「総合型地域スポーツクラブ」が、地域スポーツの核と位置づけ。

文科省には、無償の公共サービスとしてではなく、
地域住民の会費や寄付で運営する「新しい公共」クラブとして
広げたい思惑があるが、現場の要求とは必ずしも一致していない。

◆子供から80歳代まで

北九州市の総合型クラブ「戸畑コミスポ」。
市立の戸畑体育館では、高齢者がマイペースで屈伸や跳躍を繰り返し、
心地よい汗を流す。
その姿を笑顔で見つめるのが、戸畑コミスポの平川博海理事長(79)。

この体育館を拠点に、健康体操や卓球など9種目のスポーツ教室を開く。
会員数は、子供から80歳代まで約550人。
「先例がなく、手探りでつくったクラブだが、創設から15年。
幸運に恵まれて、軌道に乗せられた」

もともと、スポーツが盛んな市立大谷中の校区にあった
12種目のクラブをまとめ、「大谷コミスポ」として95年発足。
当時の文部省が始めた「総合型地域スポーツクラブ育成モデル事業」の
第1期事業に認定、国と市から計1300万円の補助金を3年間受けた。

平川理事長は、「金銭的な問題が消え、国の支援のありがたみを知った。
入会費も3年間無料にでき、会員を増やせた」
02年からは3年間、スポーツ振興くじ(toto)による助成金も得た。

クラブ側も基盤づくりに努め、運営委員会を頂点とする組織を整えて、
地域での存在感を高めた。
4年目から設定した年会費も、500円(現在1000円)に抑えて
加入率を上げるなど、工夫を重ねた。
02年、市から戸畑体育館の管理運営業務の委託を受け、
NPO法人格も取得。
名称も「戸畑コミスポ」と変更、近隣の区の住民も取り込んだ。

平川理事長は、「国の支援と自立への意志。
この二つがかみ合ったことが成功の要因
一方、「完全な自主運営が理想だが、経験上支援がないと
軌道に乗せるのは難しい。
それなのに、国の支援態勢が後退しているように思う」と懸念。

◆学校施設活用に課題

文科省の戦略では、総合型クラブに引退したトップ選手を派遣し、
トップと地域の「好循環」を生み出す方針を打ち出している。

地域スポーツの現場の悩みは、やはり「場所」の問題。
戸畑コミスポも、戸畑体育館の優先使用権はないといい、
小、中学校などの施設も借りている。
平川理事長は、「求めるのはハードの充実。
市は協力してくれるが、国がクラブをどう導きたいのか分からない」と
困惑気味に話す。

鈴木寛・副文科相は、「学校施設を含めると、日本も人口当たりの
体育施設数が、ドイツやフランス並みになる。
校庭を学校の庭ではなく、市民の庭にしたい」、
学校施設の有効活用を進める考え。

部活動との関係をどうするか、という問題は残されたままで、
クラブへの施設開放は自治体や学校によって、温度差もある。

一橋大の関春南名誉教授は、「公共スポーツ施設の予算は、
80年代の民間活力導入以降、カットされる傾向が続いている。
クラブは、スポーツ好きな人が自主的に運営していくのが基本で、
行政はそのための場所を提供することが大切。
それがないと、総合型クラブをつくっても長続きしない」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101007ddm035050030000c.html

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