2010年10月22日金曜日

インサイド:五輪ボイコット30年・第4部 「スポーツ立国戦略」の課題/4

(毎日 10月8日)

8月3日、文部科学省が策定した「スポーツ立国戦略案」を
テーマに行われた中央教育審議会の分科会。

引退したトップ選手を、総合型地域スポーツクラブに派遣する
戦略の目玉事業に対し、ソフトボール元日本代表監督の
宇津木妙子氏から注文がついた。
アスリートの派遣は、継続が大事。
単発的な派遣では、人づくりはできない」

文科省は、来年度の概算要求で、元トップ選手らを配置した
拠点クラブの育成などに、約27億円を計上。

狙いの一つは、選手のセカンドキャリア(第二の人生)の確保。
広域市町村圏(全国300カ所程度)の拠点となる総合型クラブに、
競技経験が豊富な選手を指導者として配置することで、
会員の確保に悩むクラブの起爆剤にしたいという思惑。

同省は、クラブが使用するスポーツ施設の不足を、
学校施設の有効活用によって補う考えだが、元トップ選手をクラブから
小中学校にも派遣することによって、クラブに対する理解が深まり、
学校開放が進むことも期待。
クラブが、そのような人材を長期的、安定的に確保できるかには課題。

◆有償雇用はわずか

アスリートの再就職事業に携わるJOCの荒木田裕子理事は、
「現在の総合型クラブが、アスリートが引退した後の
受け皿になってくれるのはうれしいが、きちんと整備された
(年金や社会保険などの)社会保障が必要。
JOC専任コーチなど多くの指導者が、国から支援を受けているが、
社会保障はない」

鈴木寛副文科相は、「約3000ある総合型クラブのうち、
有償で雇用できているのは微々たるもの」、
将来にわたる雇用の財源は、税金よりも、市民の寄付や
公共向けサービスからの収入で確保する仕組み作りを提案。
今回の戦略で強調されている「新しい公共」という考え方。

鈴木氏は、具体案として国から各家庭に支給される「子ども手当」を、
年収1000万円以上の家庭には、クラブに寄付してもらうプランなどを披露。

寄付で、どれだけ賄えるかは未知数。
早大スポーツ科学学術院の間野義之教授は、
寄付に頼るよりは、総合型クラブのサービスを上げることが大切。
学校のプールが屋内化され、通年使えるようになれば、
総合型クラブの会員数と収入は飛躍的に増える」
その場合にも、条件整備のための支援は不可欠。

◆部活との橋渡しに

戦略には、地域のクラブに所属する中高生に対し、
全国中学校大会や全国高校総体への参加を
検討することも盛り込まれた。
現在は、学校単位での参加だが、クラブ所属の選手にも
門戸を広げる方向性を打ち出している。

もともと国の施策として、95年に育成モデル事業がスタートした
総合型クラブは、少子化の影響で学校の部活動が揺らいだことを受け、
新しい受け皿をつくる狙い。

間野教授は、「やりたいスポーツが、学校の部活動にない
子どもがいる状況で、その機会を与えるのは大切」と前向きにとらえ、
「既存の部活動とクラブが、グラウンドを分け合いながら
共存していけばいい。
そのためには、派遣されるアスリートが指導者の資格を取る
仕組みをつくることが必要」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101008ddm035050006000c.html

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