2010年10月31日日曜日

ナダル、ウッズ、中村俊輔に学ぶ 勝つための集中力(下)

(日経 2010/9/10)

第2回は、テニスのラファエル・ナダルとサッカーの中村俊輔、
ゴルフのタイガー・ウッズの手法を解説。
すでに実践して効果を上げているビジネスマンの事例を紹介。

【ラファエル・ナダル】
集中とリラックスを共存させる 細かく休むことで集中力を持続

広く外的な集中力」は、長時間にわたって広い視野で周りの動きを認識し、
判断を下す時の集中力。
テニス選手や、サッカーのゴールキーパーに特に求められる。

「これを高めるには、集中と同時に、リラックスしていることが必要。
一見、矛盾しているように思われるが、実は集中とリラックスは共存できる
鹿屋体育大学の児玉光雄教授。

◆集中するために休息を取る

集中力は、開始直後から減衰、終わり間際で少し上がる。
こまめに休息を入れると、集中力を高レベルで維持できる上、
長時間持続させることもできる。

そのためには、集中をあえて途切れさせ、リラックスする時間を挟むとよい。
長期戦に備えて、集中エネルギーを回復させる効果もある。
「脳内で集中力を支える神経群は、カテコールアミンという物質を消費。
集中し続けていると、やがてそれが足りなくなって、集中が途切れる。
カテコールアミンは、短時間の休息でチャージできる」(児玉教授)。

集中力は、いつか必ず途切れる。
そうなる前、短時間でいいから意識的に、こまめに休息を取ることが、
集中力を高く保ち、かつ長時間、持続させる秘訣。

テニス選手のラファエル・ナダルは、コートで飲むペットボトルの向きを
気にするなど、プレー中の“決め事”にこだわって、集中力を高めている
選手だが、同時にゲームの流れが相手側に傾きかけた時、
靴ヒモを結び直す。
単に相手との駆け引きではなく、短時間を利用して一息入れるのだ。

仕事でも、「広く外的な集中力」は必要。
自分が会議の仕切り役なら適宜、休憩を挟む。
お茶をゆっくり飲み干す、窓の外に目を向ける、
たったこれだけでも効果がある。

【ラファエル・ナダルに学ぶ「おまじない」活用のポイント】

◎試合中に集中力をあえて途切れさせる
プレー中、意識してリラックスの瞬間を作る。
ゲームの流れが相手の側に傾きかけた時、タイムを取って靴ヒモを結び直す。

◎効果
合間に短い休息を挟むことで、脳内にホルモンの一種である
カテコールアミンがチャージされ、集中力を高レベルで維持できる。

◎ビジネスに応用
資料を長時間、読み込む時などはこまめに休息を入れる。
疲れ切ってしまう前、短い休みを挟むのがコツ。
2時間集中する時は、30分ごとに5分程度のブレークを設ける。

◆中村俊輔は、サッカーノートで「広く内的な集中力」を向上

広く内的な集中力」は、自分が抱えている問題を分析したり、
練習メニューを考えたりする時に必要。
これは、おまじないとは別のアプローチ、「言葉による記録」で高めよう。

「高い精度で入念なシミュレーションを行う必要があり、
様々なデータや経験などを、紙に書いて記録する習慣をつけると
効果が上がる」(児玉教授)。

サッカーの中村俊輔は、高校時代からノートをつけ始めた。
自分が目指すプレーや、試合の反省を書き出している。

仕事では、プロジェクトごとに専用ノートを用意し、アイデアを書き連ねたり、
資料をはり付けるなどの方法で、この集中力を高めることができる。

◆タイガー・ウッズが実践しているパフォーマースキル

「常に勝ち続ける選手のインタビューを聞くと、
『勝つと思っていた』と答える人が圧倒的に多い。
初めから、勝つ気持ちでいたから勝てる。
スポーツ心理学では、これを『パフォーマースキル』と呼ぶ」(児玉教授)。

タイガー・ウッズは、子供の時から「いつもチャンピオンのような気持ちや
態度でいるように」と、父親にたたき込まれてきた。
ゴルフが未熟だったころも、グリーンで堂々と振る舞っていた。
「並の選手は、『勝ってから、勝者のように振る舞おう』と考えるが、
勝ち続ける選手は、最初からチャンピオンの気持ちでいる」
なりきることも、効果がある。

◆サッカー日本代表の“肩組み効果”は絶大?

2010年サッカーワールドカップで、日本代表は2大会ぶりに
決勝トーナメントに進出。
予選リーグ初戦のカメルーンとの試合で、国歌斉唱の時、
日本代表メンバーが肩を組んでいたのを覚えている人は多い。
それまで見られなかったことだが、闘莉王がロッカールームで提案し、
やり始めたと言われている。
この時、ベンチでも控えの選手たちが肩を組んでいた。

チームの団結力は、メンバーがお互い心を開くことによってしか生まれない。
スキンシップの効果は、昔からよく言われるが、
言葉よりも何倍も強い効果がある」(児玉教授)。

「肩を組む」、たったこれだけのことに、侮れないおまじない効果が。
お互いに心を開くことは、ビジネスを成功させる上でも大切。
相手と握手をしたり、部下の肩をたたいたりすることで応用できる。

◆ビジネスパーソンの“おまじない”

CASE1 カズのまねと赤いネクタイ 映像制作会社社長 Aさん

赤いネクタイが、私の勝負アイテム。
5、6本は持っていて、大事なプレゼンの時に必ず締める。
赤が映えるように、シャツは白。
プレゼンの前、手を胸に添えるしぐさ。
尊敬する三浦知良選手が、日本代表で国歌斉唱の時、
必ずやっていたポーズ。気合が入る。

【児玉教授のコメント】
色彩学で、赤は集中力を高める色とされ、理にかなっている。
営業職の人なら、相手から好感を持たれるオレンジ色のネクタイもいい。

CASE2 先祖の墓を待ち受け画面に メーカー広報 Bさん

正月に先祖の墓参りをした時、墓石の写真を撮って、
待ち受け画面にした。
それから人との出会いが急に広まって、プロジェクトがいい方向に。
商談前、必ずケータイの電源を切るが、その時、必然的に
画像を見ることになり、何か気持ちが切り替わる気がする。

【児玉教授のコメント】
「誰のためにやるのか」を、明らかにすることは仕事の動機付けに。
「ご先祖様に感謝するため」という気持ちが働いている。

CASE3 スタバでいつも同じ物を飲む PR会社 Cさん

緊張する仕事の前、スターバックスコーヒーに立ち寄って、いつも同じ、
ホワイトモカのトールサイズ(ダブルショット、エキストラホット)を頼む。
すると、緊張がほぐれるような気がする。
私自身、海外旅行が好きで、旅先でリラックスしている時、
いつもこれを飲んでいるからかもしれない。

【児玉教授のコメント】
店も頼むものも決まっていて、これはプリショットルーチンそのもの。
気持ちが落ち着くように、刷り込みがなされている。

CASE4 ヨガの胸式呼吸でリラックスする 出版社 社長 Dさん

1年前からヨガを習い始め、仕事中にヨガの胸式呼吸をやる。
大勢の前で話す時、いまだに緊張するが、胸式呼吸を行うと、
肩の力が抜けて気持ちが落ち着く。
眠気を吹き飛ばす効果もある。

【児玉教授のコメント】
深く呼吸することで、脳に酸素が行き渡り、ストレスが解消される。
体が軟らかくなって、肩こりもほぐれる。現代人に、ヨガはお勧め。

CASE5 朝礼の後、指輪を磨く 指輪販売店店長 Eさん

接客前、自分の指輪や時計、ネックレスを磨く。
婚約指輪と結婚指輪を販売しているので、お客様の目に留まるから、
きれいにしておかなきゃ、という理由もあるが、きれいに磨くことで、
何か良いものを呼び込める気がする。
磨き終えると、前向きな気持ちになれる。

【児玉教授のコメント】
これも仕事前のプリショットルーチン。
できれば10分くらい磨き続けると、頭が空っぽになり、
瞑想の効果も期待できるのでお勧め。

http://www.nikkei.com/biz/skill/article/g=96958A9C93819499E2EAE2E29A8DE2EAE2EBE0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E2EAE2E3E0E2E3E2E1E6E1E4

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