2010年11月1日月曜日

発達障害の学生支援(7)体験の場で「支える側」に

(読売 10月22日)

礼拝の始まりを知らせる教会音楽がキャンパスに響くと、
ベンチでくつろぐ学生たちが、次々とチャペルへ向かっていった。

キリスト教の精神を建学の理念に掲げ、一人ひとりの学生を
大切にする少人数教育から出発した、プール学院大学(堺市)は、
2005年から、発達障害の学生への支援活動を続けている。

学生支援センターを核にした学習支援、ソーシャルスキルトレーニング、
キャリア教育の3本柱。
担任やカウンセラーらによる支援会議で、個別の教育支援計画を策定、
結果を評価する。
発達障害者支援法の成立を受けて始まったこの取り組みは、
07年、文部科学省から優れたプログラムに選ばれている。

「特別支援、準支援、見守りの三つの支援レベルを設けて、
効果的なサポートを探っている」、責任者の森定玲子准教授(48)。
目指すのは、障害の有無にかかわらず、
すべての教職員・学生が互いの個性を認め合い、支え合う学びの場

国際文化学部2年の金咲洋輔さん(22)(仮名)に会った。
東京の大学に進学したがうまくいかず、医療機関で、
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の疑いがあると。
昨年、地元の同大に入った。

大学は、「何でも体験したい」という学生の考えに応じ、
様々な体験の場を提供。
特別な支援を受けていないものの、金咲さんはこれまで、
新入生キャンプを手伝い、大学祭にも積極的に参加し、
教職員に意見を言うことも多い。
地域貢献の授業では、小学校を訪れ、発達障害の児童を教える
教師のアシスタントをしている。

金咲さんは、「こうした体験を通し、発達障害者は支援を受けるだけでなく、
逆に支援する側になってもいいと思うようになった」

障害というものを意識し過ぎず、相手が「手伝って」と言った時だけ
手を差しのべるくらいでちょうどいいことも。

「障害に対し、過敏な社会では、告白がしづらく、支援が受けにくくなる。
ありのままを認めて、もっと普通に接して」と金咲さん。
森定准教授は、「支援が過剰でも気づかないことがあり、
彼の意見が、適正な支援を考える契機となっている」

支援する側、される側という心の垣根を取り払った時、
誰もが差別されず、包み込まれるように生きられる
インクルージョン社会への入り口が見えてくる。

◆発達障害者支援法

広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)など、
発達障害の早期発見と支援を、国・地方自治体の責務と定めた法律。
2005年に施行。
第8条、「大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、
適切な教育上の配慮をするものとする」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101022-OYT8T00258.htm

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