2010年11月4日木曜日

発達障害の学生支援(8)才能を伸ばす視点必要

(読売 10月23日)

大学入試センター特任教授 上野一彦さんに聞く

今回、発達障害の学生支援に力を注ぐ七つの大学の実践を報告。
「大学全入時代」が到来する中、こうした学生を高等教育の場で、
どのように支援していけばよいか?
大学入試センターで、入学者選抜における障害者支援を研究する
上野一彦特任教授に話を聞いた。

――大学に進学する発達障害の学生は増えているのか?

「日本学生支援機構が、全国の大学などを対象に実施する
実態調査によると、2009年で、発達障害の診断書がある458人の学生が、
174校に在籍。
診断書がなくても、発達障害と推察され、教育上の配慮が
行われている学生も699人、診断書のある学生の約1・5倍。
両者を合わせると1157人、前年より500人増

――発達障害の学生に対し、センター試験では配慮が行われているのか?

特別措置を申請できる障害種別は、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、
病弱の規定しかなく、発達障害で特例を求めるには、
『その他』で志願するしかなかった。
来年の試験から、障害種別に『発達障害』が加わる。
審査に通れば、試験時間の1・3倍延長、拡大文字問題冊子の配布、
別室受験などが措置」

「申請には診断書に加え、高校で受けた支援を記す個所もあり、
教師が作成した個別の指導計画などの提出も求められる。
結果、保護者から高校へ、特別支援教育の推進を求める声が
強まることが予想、大学入学後の支援体制充実にも大きな影響を及ぼす」

――入試の多様化で発達障害学生を受け入れたものの、
支援に手をこまねいている大学も多い。

「教育理念に沿った学生を育てるため、どういった能力を持った
受験生を求めるのか、という視点が欠けている。
発達障害の学生の中には、特定の領域で能力を発揮する者もいる。
支援だけでなく、その学生ならではの才能を伸ばすという視点が必要。

成長がゆっくりな学生には、丁寧な指導が求められ、
そうした教育はその他の学生の力も引き上げる」

――どの大学でも頭を悩ませているのが、就労問題。

「就職を有利にするため、療育手帳を取らせる大学もあると聞くが、
知的発達の遅れを伴わない発達障害学生が、知的障害者に
交付される療育手帳を持つのはおかしい。

大卒は、決して万能なパスポートではない。
自立して社会参加していくために何が必要か、
大学に入る前にしっかりと考えてほしい」

◆うえの・かずひこ

専門は、発達臨床心理学。学習障害(LD)研究の草分け。
東京学芸大教授、副学長を経て、現在は名誉教授。
日本LD学会理事長。66歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101023-OYT8T00254.htm

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