2011年1月11日火曜日

女の涙に弱いのは男の本能?

(ナショナルジオグラフィック 1月7日)

最新の研究によると、男性の性欲は、女性の涙で減退するらしい。
感情に由来する「泣く」という行為は、人間に特有と考えられるが、
科学的な解明は進んでいない。
マウスを使った以前の研究により、涙の“化学信号”に
情報伝達能力があると判明。
人間の涙にも、同様の機能があるのではと推測。

「人間は、既に言語やボディーランゲージで、高度にコミュニケーションし、
化学的と言っても、それほど大層な話ではない」、
イスラエル・ワイツマン科学研究所の神経生物学者、ノーム・ソベル氏。

人間の涙に、どのような能力が潜んでいるのだろう?
少なくとも、感情に由来する女性の涙に、男性ホルモンの一種
「テストステロン」の分泌を抑える働きがある。

攻撃性を高めるホルモンが抑制されれば、性欲も減退する。
女性の涙は、男性の性衝動に対する化学的な拒否の表明

実験では、女性の新鮮な涙と塩水がしみこんだシートを用意、
複数の男性被験者の鼻の下に、別々に貼り付けた。
涙は、“泣ける”映画を観た女性から集め、塩水は同じ女性の顔から汗を採取。
においを嗅いだだけでは、被験者に変化は見られなかった。

実験とは関係ない普通の女性の写真を見せたところ、
涙グループの被験者は、性的興奮度が塩水グループより低かった。
興奮の度合いは、心拍数、皮膚温度、血中のテストステロン濃度など。

MRI(核磁気共鳴画像法)による脳検査も実施、
その結果も新発見の信憑性を裏付け。
涙を嗅いだ男性の脳は、性的興奮をつかさどる部位の活動が薄かった。

ソベル氏は、この研究にはまだまだ続きがある。
性欲減退は、単なる副作用かもしれない。
涙の化学成分で、テストステロン量を減らす本当の目的は、
攻撃性の抑制にあるのではないか?
「つまり、他の動物の攻撃性を抑えられれば、
進化上大きなメリットになる」とソベル氏。

ある種のメクラネズミは、分泌した涙を全身に擦りつけるが、
敵を寄せ付けない効果があるらしい。
「敵の攻撃性を抑えて、身を守っているようだ。
実験結果と同じ現象ではないか」

ソベル氏によると、涙のシグナルは性別より立場の優劣と関係がある。
立場の弱い側が涙を流すことで、
強者の攻撃性を抑えようとしているのかもしれない。
チームは、男性の涙も研究しようと計画。

アメリカ、シカゴ大学にある精神生物学研究所
(Institute of Mind and Biology)の設立者マーサ・マクリントック氏は、
人間の化学信号研究の第一人者。
同氏は、涙の研究の功績を認めながらも、化学信号の意味に関して
早計に結論を出さないよう警告。
「さらに研究を深める必要がある。
何かあるのは間違いないが、全体像を掴めていないし、仕組みもわからない」

「男性、幼児、高齢者の涙も調べる必要がある。
涙の効果は、年代により違いがあるのかも。
性欲だけに話を留めるのはいかがなものか」

研究成果は、「Science」誌オンライン版に1月6日付けで公開。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110107001&expand#title

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