2011年1月22日土曜日

国語力を鍛える(7)大学1年「日本語」必修

(読売 1月15日)

「仲人さんにお見合いの断り状を出す時は、
早めに丁寧に書きましょう」
約480人の学生で埋まった昭和女子大学の大教室。

岸田依子教授(中世文学)が切り出すと、雰囲気が少し変わった。
携帯メールに夢中だった者が、顔を上げてくすりと笑う。
毎週水曜日、1年生を対象に行う必修の「日本語基礎」。

45分間の授業を年間30回。
漢字や長文読解、敬語などを学ぶ。
この日のテーマは、「手紙の書き方」。
絵はがきのコピーなどを資料として配ったうえで、
学生の関心を引くために取り上げたのが、お見合いの例。

「今の若い人は、手紙を書く機会がほとんどない。
最低限必要なことを身につけてもらいたい」と岸田教授。

「日本語基礎」が始まったのは4年前。
論文に、「っていうか」、「マギャク」などの話し言葉や絵文字が頻出する、
受け答えも満足にできないといった実態に、
教員が悲鳴を上げたのがきっかけ。

「仲間内の言葉が、社会では通用しないのを知ってほしかった」、
授業をとりまとめる猪熊雄治教授(59)(日本近代文学)。
授業の狙いは、相手によって言葉や伝え方を選べる力の養成とした。

テキストは、就職試験に使われる能力・適性検査「SPI」などを
意識した実践的なものとし、テキストを作った教員12人が授業も受け持った。
授業時間は45分と通常の半分にし、学生の興味を引く流行歌も
教材に使うなどの工夫を重ねた。

元新聞記者や編集者らが文章の書き方を個別指導する
ライティングセンターを、開始と同時期に設置。
同大・短大12学科のうち9学科で、少人数の必修ゼミを始めるなど、
きめ細かな指導を充実させていった。

この結果、学生アンケートでは「敬語は新鮮」、「手紙を書いてみたい」など、
積極評価する声が年々増加。
ライティングセンター利用者も、2008年度の584人が、
昨年度は961人へと2倍近くになり、「手応えを感じる」と猪熊教授。

「授業の課題がきつい」と、ぼやく学生も少なくないが、
文化創造学科1年の勝千恵さん(18)は、
「敬語の使い方は、就職活動でも役立ちそう」

日本語基礎を受講した学年が就活に臨むのは、今回が初めて。
就職氷河期のサバイバルに授業がどう寄与するか、成果が注目。

◆ライティングセンター

論文やリポート作成を個別指導する場として、
大学が独自に設ける学習支援の施設。
アメリカでは、ほとんどの大学が設置、日本でも徐々に広がっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110115-OYT8T00174.htm

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