2011年1月16日日曜日

インタビュー・環境戦略を語る:ニコン・苅谷道郎会長

(毎日 1月10日)

ニコンは、有害物質である鉛とヒ素を含まない光学ガラス
「エコガラス」の開発や、環境負荷の少ない部品を選んで調達する
「グリーン調達」などに取り組んでいる。
苅谷道郎会長に、環境戦略を聞いた。

--70年、公害対策委員会を設置するなど、
早くから環境問題に取り組んでいる。

◆カメラや顕微鏡の生産には、六価クロムや水銀などの化学物質を使う。
環境保全や有害物質削減は、化学物質を扱う企業として当然の責任。
71年、光学ガラスを生産する相模原工場を新設する際、
相模川の水源地帯を守ろうと、大規模な公害処理装置を取り付け、
窒素酸化物を排出しないようにした。
当時から、環境保全がニコンのため、地球のためになるとの意識が
非常に強かった。
その後も「エコガラス」の開発・生産や、環境に関する国際標準規格
「ISO14001」取得などに取り組んでいる。

--その他、どのような取り組みを進めているか?

◆毎年、省エネ、有害物質対策などテーマごとに目標を定め、
達成できたかどうかも社内外に公表。
09年度、新製品の消費電力効率を従来製品比で30%向上させることは
達成したが、国内物流のCO2排出量06年度比15%以上削減は
達成できなかった。

掲げた目標は、ニコンと社会とのお約束。
未達成の場合、失敗の原因を検証させ、新たな目標を設ける。
10年度は、国内生産会社で廃棄物05年度比23%削減などの
目標を掲げた。
毎年、目標を見直し改良を続けるのは手間がかかるが、
社員は、「今できることをきちんとやろう」と取り組んでいる。

--子供向けの啓発活動にも熱心。

◆持続的な環境保全には、子供のころからの意識付けも欠かせない。
09年度、財団法人「日本自然保護協会」と協力し、
富士山などの生物多様性をカルタ形式で遊びながら学べる
「いきものカルタ」や、群馬県みなかみ町の「赤谷の森」の
動植物の生態を紹介する「赤谷ノート」を発行。

どちらも全国の小中学校に配布し、「写真が豊富でわかりやすい」と好評。
国連環境計画などと共催で、
「国連子供環境ポスター原画コンテスト」も開催。

--今後は何に取り組むか?

◆ニコンは、液晶テレビ製造装置も生産、
ブラウン管テレビに比べ、液晶テレビの消費電力は4分の1程度との試算。
テレビメーカーなどの努力の結果だが、
我々の製品が消費電力削減に貢献できているのは社員の誇り。
今後も生産から廃棄まで、あらゆる場面で環境に貢献できるよう、
まじめに誠実に取り組んでいく。
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◇かりや・みちお

横浜国立大学大学院工学研究科修了。
1967年日本光学工業(現ニコン)入社。
専務、副社長を経て05年に社長。2010年6月から現職。
神奈川県出身。69歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2011/01/10/20110110ddm008020007000c.html

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