2011年1月18日火曜日

SOSで世界へ出動 スイスの救急搬送システム

(2011年1月12日 共同通信社)

医師が搭乗し、治療をしながら患者を運ぶ
救急医療用ヘリコプター「ドクターヘリ」。
日本では、各地の自治体などが救命率向上を目指して
導入を進めているが、アルプスを抱え山岳事故が多いスイスは、
ヘリや小型飛行機での救急体制が整っている。

昨年7月、日本人死傷者を出したアルプス観光列車脱線事故でも、
負傷者搬送でヘリが活躍。
民間のドクターヘリや飛行機の派遣会社は、
世界中からの救急要請にも対応。

▽現場まで15分

NPO法人「レガ(REGA)」は、スイスの最大都市チューリヒに本部を置く、
この分野の最大手。
国際空港の一角にあるコールセンターには、
繁忙時なら1日100~300件の救急要請が飛び込む。
6人が24時間、3交代で電話を受け、国内ならどこでも15分以内に
ヘリが到着できるよう、各地の基地に指示を出す。

オペレーター歴10年の女性は、「山岳遭難の場合、
現場の手掛かりをつかむのが難しい」
「短時間に、7人から遭難の救急要請が来たときには頭を抱えたわ」

▽やりがい

レガはヘリ17機のほか、小型ジェット機3機を所有。
政治的理由で着陸できない北朝鮮などを除き、スイス在住者による
世界中からの救急要請に応じている。
10年には、10年ぶりにイラクのバグダッドで患者を迎え、スイスに搬送。

民間航空会社を退職し、レガのパイロットになった
マーク・ベルティさん(32)は09年、20カ国に駆け付けた。
「給料は、航空会社の時と同じでも、
人の命を救うことにやりがいを感じる」と目を輝かせる。

最近もグリーンランドに飛び、肺の疾患で地元病院に運ばれた
1歳男児を、スイスの病院に緊急搬送。
「到着前に死亡する例が、年に2~3件はある。
遺体は運べないので、むなしい気持ちになる」

▽年間2600円

レガは1952年、公的機関の一部として発足。
60年、独立した基金での運営を始めたが、当初は財政難が続いた。
現在では、スイス人口の3割近くの200万人もの会員を抱え、経営は安定。
個人なら、年間30スイスフラン(約2600円)の会費を支払うだけで
救助を受けられる。
年間の総出動回数は、約1万4千回に上る。

患者の救命は、一瞬の判断に懸かっている。
電話を受けるオペレーター、現場に急行するパイロットと医師の連携が重要」
20年の経歴を持つフライトドクター、ウルス・クレマーさん(57)。

レガは、海外での大災害時にも、積極的に支援の手を差し伸べていく意向。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/1/12/130824/

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