2011年1月21日金曜日

遺伝子研究で競技力向上に 福島大は陸上練習で試み

(2011年1月17日 共同通信社)

陸上男子100mで世界記録を持つウサイン・ボルト選手を筆頭に、
ジャマイカにトップスプリンターが多いのはなぜか?

遺伝子研究の観点から、アスリートの能力に迫る報告が相次いでいる。
日本のトップ選手を育てるチームでは、
「スポーツ遺伝子」の特性を把握し、競技力向上に生かそうとする動き。

運動能力に関係するとみられる遺伝子は60~70あるとされ、
研究者はその中のACTN3遺伝子に注目。
この遺伝子には、瞬発系競技に必要な瞬間的に強い力を発揮する
速筋のタンパク質を作れるRR型とRX型、作れないXX型の3タイプ
判明し、一般のジャマイカ人やアフリカ系米国人の9割以上が
RR型かRX型に属する報告。
筋骨隆々の黒人は、速筋がつきやすい体質。

白人スプリンターにも、黒人と同様の結果が出たという研究も。
2008年北京五輪陸上男子400mリレー銅メダリストの
朝原宣治さんはRR型。

東京都健康長寿医療センター研究所の福典之研究員は、
「瞬発系競技でトップ選手になるためには、
RR型とRX型が鍵となる遺伝子」

福研究員が、日本人で五輪出場選手と一般人のエネルギー代謝を担う
ミトコンドリアDNAを調べた結果、五輪選手の中で特定の型に
持久系と瞬発系の競技者が集中したことが判明。

「遺伝子で、自分がどの競技向きなのか特性が分かれば、
日本人が欠けているものをトレーニングで補うことができるんじゃないか」

陸上女子400m日本記録保持者の千葉麻美選手(ナチュリル)らを
指導する福島大の川本和久教授は、
スポーツ遺伝子を生かしたトレーニングを試みている。

千葉のACTN3遺伝子は、短距離向きではないXX型だが、
エネルギー効率の特性を示すUCP1遺伝子では「省エネ型」。
現在、筋肉量を増やす練習をやめ、
スピードの持続力を磨く練習に取り組む。

最近、スポーツ遺伝子の簡易検査を行うスポーツスタイル社(船橋市)に、
子どもを持つ保護者からの申し込みが増えている。
スポーツ遺伝子の有無や特性だけが運動能力のすべてを
左右するわけではなく、研究途上の分野。

遺伝子検査は、「選手の選別に使われる」と危ぶむ声もある中で、
川本教授は、「遺伝子を通じて自分の特徴を知れば、
必要のない練習を削ることができる。
選手も、才能を伸ばす一つの手段と理解している」。
千葉選手は、来年のロンドン五輪で自らの特性を生かし、
800mで挑む計画を持っている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/1/17/131051/

0 件のコメント: