2011年2月6日日曜日

国語力を鍛える(10)読んだ感想 自由に発言

(読売 1月21日)

茅ヶ崎市立円蔵小学校5年3組。

子どもたちの手元には、詩「おおぞらのこころ」を読んで、
各自が書いた感想文がある。
ボランティアの講師で、元小学校長の青木照明さん(82)が、
「対話を始めてください」と言うと、子どもたちは詩の情景や
自分の気持ちを語り始めた。

「自由に飛んでみたい気持ちになる」、
「大空の神様のもとに行く様子だと思う」。
指名なしに思い思いの発言を続ける子どもたち。
青木さんは、ほほ笑みながらじっと耳を傾け、内容を板書するだけ。

青木さんは8年前から、文学作品の世界に入り込んで理解を深める
独自の指導法で、国語を教えている。
読み取ったイメージや直感を語らせる。
想定した答えや主題と違う発言でも、否定しない。
この手法を「融合読み」と名付け、「イメージを全員で共有でき、
新たな発想や議論も生む。
教師は正解を言いたくなるが、ぐっと我慢です」

このクラスでは昨年11月以降、青木さんが計17時間授業を担当。
担任の船木章吾教諭(27)は、「年が明けた頃から、
班で朝のスピーチのテーマを決める際、誰もが考えを自由に
発言できるようになり、決まるまでの時間も半減した。
全員参加型の学級運営にもつながっている」

かつては、一つの正解を求める発問と数人だけを指名する
授業をしてきた。
定年間近に、文学作品は読み手が作るという考え方に出会い、
教師の介入なしに、子どもが理解を深める方法の模索を開始。

退職後、依頼を受けて始めたボランティアの授業で、
子どもたちに自由に話し合わせたところ、予想以上の効果があった。

青木さんが口を挟んだのは、一度きり。
詩の中の「白鳥」は、ハクチョウか否かで議論が行き詰まった時。
「音読する時、『しらとり(白い鳥)』と読んでもいいと言ったよね」と
にっこりすると、子どもたちは「あっ」とひらめいた表情に。
「ハクチョウでもサギでもいい。
作者は、読んだ人に決めてほしいと考えている」という発言に、皆が納得。

「先生は、最後まで話を聞いてくれるから、
みんなが発表できる」と菊地航平君(11)。

明治学院大学の下田好行教授は、
「子どもの素直な思いを肯定して、信頼を得ている。
ひらめきや心の声を大切にして、読む力を育む優れた指導方法だ」と評価。

教壇に立って、60年以上。
たどり着いた答えは、子どもの心を肯定するという原点だった。

◆青木さんが推奨する「融合読み」の大まかな流れ

〈1〉全員の感想を読み、読み深めたい部分に赤線を引く
〈2〉赤線の部分から課題を絞る
〈3〉課題に対する自分の考えをまとめ、発表する
〈4〉友だちの発表を聞き、新たな共感やひらめきに気付く
〈5〉意見の全体を確認してまとめ、趣旨をとらえる
〈6〉まとめの感想を書いて話し合い、文意の多様さに気付く

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110121-OYT8T00118.htm

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