2011年2月9日水曜日

荒れない学校(2)「非暴力」は小学校から

(読売 1月27日)

不服そうなチャッド君の表情が、
教室前面のスクリーンに大きく映し出された。

ブルース君に、バスケットボールを横取りされてしまった。
「チャッド君はどんな気持ちかな?」
中台生美教諭(35)が聞くと、児童からは「やな気持ち」、
「許せない」と声が上がる。

品川区立第二延山小学校2年3組で行われた、
暴力防止教育プログラム「セカンドステップ」の授業。

中台教諭は、「『怒り』のサインが出ている。
怒ることは、人間にとって当たり前」、
「『やられたらやりかえす』だと解決にならない。
『ケンカを避ける』ためには、どうすればいいかな?」と問いかけた。

「落ち着きのステップ」と男子児童が発言したのに続き、
「前に習ったよ」と次々に意見が出る。
「数字を逆から数える」、「深呼吸する」、「その場を離れる」――。
安全か、フェアかなど話し合い、
「ブルース君に、『一緒に遊ぼう』って言ってみようかな」という
解決案も最後に出た。

品川区は、2009年度から、同プログラムを区立全小学校38校に導入。
1、2年で計20時間。
「気持ちは変わる」、「フェアとは」などの相互理解、
「立ち止まって、落ち着いて、考えよう」という問題解決法と
「独り言」など怒りの扱いを順に学ぶ。

和気正典・同区教育委員会小中一貫教育担当課長(57)は、
「家庭の教育力が低下すると共に、集団遊びや大人と接する機会が減り、
相手の表情から心理を読み取ったり、トラブルが起きた時、
感情をコントロールしたりする方法がわからない子どもが増えている。
どう対応すればいいかを、小さいうちから教える」と狙い。

「『死ね』、『殺すぞ』と、簡単に口にする。
子ども同士で、すぐ殴り合う。これはあかん。
何かを間違って覚えたのか」

数年前、兵庫県のある小学校に赴任した校長は、
子どもの状況にがくぜんとした。
早速、「社会で生きる力」などの授業を導入、
すぐかっとなる子が数か月で落ち着いた。

校長は、「暴力をふるいそうになった時、『その場を離れる』などの
方法を積み上げて学んでおけば、中学、高校と上がっても役に立つはず」

子どもたちが、荒れる主な舞台は中学校。
相手を思いやり、暴力をふるわない気持ちを育てる教育は、
小学校でも徐々に始まっている。

◆セカンドステップ

NPO法人「日本こどものための委員会」が、
シアトル市で開発されたプログラムを翻訳し、日本に紹介。
試行時に調査した山形大学の宮崎昭教授によると、
攻撃する態度が減るなどの効果があった。
「ファーストステップ」は、暴力の被害者にならないためのプログラム。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110127-OYT8T00302.htm

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