2011年2月11日金曜日

(福島)<ひと言葉>「人生の最期大切にしたい」

(2011年1月30日 読売新聞)

県警察医会長 中村雅英さん(69)

異状死体の発見現場に急行し、遺体を見て死因を明らかにする警察医
病死、自殺、孤独死と様々な人生の終幕に立ち会うのは、
犯罪を見逃さず、死者の尊厳を守るため。

医師としての社会的使命を果たしたいと、
いわき東署の警察医を引き受けたのは1996年4月、54歳の時。

その1か月後、「今でも忘れられないショッキングな出来事」が起こる。
警察署員から、異状死体が発見された住所と名前を聞いて、
不安が脳裏をよぎった。

現場に着くと、女性が自宅の物置で首をつっていた。
やはり、自分の患者だった。
「サインを出していたはずなのに、自分は見抜けなかった」。
もっと患者に関心を寄せ、心の揺らぎを受け止めなければ--。

女性を死なせてしまった悔恨が、親身になって患者に寄り添う
診療スタイルにつながった。

これまでに行った死体の検案は870体以上。
死は、古くから「忌まわしいもの」として避けられ、死因を調べる
「診断学」は、なおざりにされてきたと感じる一方、
死者にも、生者と同じく尊厳と人格が保たれるべきと考えている。

「死を診断するのは、人生の完結に立ち会うということ。
死因、死亡時刻をできるだけ正確に把握することで、
遺族の心は安まるのではないか」

孤独死の死体検案が増えていることに、憂いを感じている。
問題の解決には、「何よりも、近隣住民など身近にいる人々が、
独居生活者に関心を寄せることが大切」

2009年、県警察医会の会長を引き受けた。
県内の警察医は約40人、多くは60歳以上と高齢化が進む。
「後継者の育成が必要。まだまだ頑張らなくては」

昼夜なく呼び出され、遺体と対面する警察医の仕事に、
周囲から、「大変な仕事だね」とよく声をかけられる。
時間を選ばない点では、救急患者も同じ。
苦に感じたことはない。

「やっぱり、人が好きなんだな。
だから、人生の最期を大切にしてあげたいんだよ」。
優しい笑顔をのぞかせた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/1/31/131813/

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