2011年2月14日月曜日

園芸療法の園芸員・加藤勉さん スマイル写真館

(2011年2月8日 毎日新聞社)

◇緑の勢い感じ、体が喜ぶ--加藤勉さん(39)

種まきから収穫まで、園芸作業を通じた高齢者や障害者の
リハビリを、園芸療法という。

介護が必要なお年寄りの通所施設で、
園芸療法の園芸員として、週3日働く。
農薬を極力使わず、トマトやサツマイモを育てるため、
主な仕事は草むしりだ。
夜明け前に起き、日没間もなく就寝する。

専門学校で建築を学び、建築設計会社に入社。
コンピューターで、図面を描いていた。
2級建築士の資格を取った入社2年目から、急に仕事が増えた。
図面を描くだけで精いっぱいなのに、チェックを任された
他の図面が机に積み上がる。
ミスを連発し、夜になると、「寝ないで働け」という
上司の声の幻聴に襲われた。

その後、設計システムの更新を担当したが、
やり終えた途端に疲れ果て、精神科に入院、1年休職。
「周囲に手伝ってと言えず、パンクした」

復職して数年は、会社と1人暮らしの自宅を往復し、
職場ではコンピューターを操作するだけの日々。
幻聴も消えず、再び休職。

自分の世界を広げようと、農業体験の合宿に参加。
ゴム長靴でぬかるみを踏みしめ、カマで稲の束を刈り取る。
「体が喜んでいる感じで、とても楽しかった」。
農業を学びたくなった。

休職中にリストラ、農業大学校に入学。
卒業後に就職できず、投げやりに。
「いくら頑張っても、つぶれてばかり。
でも、自分から逃げていたら、いつまでたっても同じ事の繰り返しだ」
まずは、病気と向き合わねばと再入院。
そこで初めて、統合失調症と告げられた。

NPO法人が実施している園芸療法に通い始めたのは、
退院して2カ月後。
畑に種をまき、水をやり、緑の勢いを感じる。
小さなスイカが一つできたとき、無性にうれしかった。
わずかなずれも許されない図面作りと違い、形がいびつでも構わない。

同じ病気の小百合さんとは、畑で出会った。
もうすぐ結婚3年。
お互い「ありがとう」、「ごめんね」と言葉にするよう心掛け、
いたわり合い、ゆっくりと歩いている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/8/132161/

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