2008年4月7日月曜日

気象庁が21世紀末の日本の気候変化予測

(サイエンスポータル 2008年3月28日)

気象庁が、地球温暖化による21世紀末の日本付近の
気候変化を予測した結果を公表。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が作成したシナリオのうち、
排出量が比較的多いA1Bシナリオと、排出量が比較的少ない
B1シナリオの2つで予測した結果。

これまでのIPCC報告書には、日本の研究成果が相当反映され、
報告書の執筆にも多くの日本人研究者がかかわっている。
今回の予測結果は、専門家の想定内。

気象庁によると、21世紀末の日本付近の気候は20世紀末に比べ
次のように変化すると予測。

寒候期(12~3月)の平均気温は、高緯度ほど大きく上昇。
上昇量は、A1Bシナリオの場合、北海道で3℃以上、
東北から西日本では2~3℃、沖縄・奄美では1.5℃。
B1シナリオの場合、北海道で1.5~2℃、他地域で1~1.5℃。
降雪量は、排出シナリオにかかわらず東北以南で減少、
北海道の標高の高い地域で増加。

年平均海面水温は、A1Bシナリオの場合100年あたり2.0~3.1℃、
B1シナリオの場合100年あたり0.6~2.1℃上昇。
海面水温の上昇は、日本南方海域より日本海で大きい。
年平均海面水位(海水の熱膨張による寄与のみ)は、
A1Bシナリオの場合100年あたり9~19cm、
B1シナリオの場合100年あたり5~14cm上昇。

A1Bシナリオは、すべてのエネルギー源のバランスを重視しつつ、
高い経済成長を見込んだ場合となり、
昨年11月の第4次報告書で、2100年の二酸化炭素濃度は717ppmと予測。
現在(2005年)の濃度は、379ppmだから1.9倍に増える。
世界の平均気温の上昇は約2.8℃、海面の平均水位上昇は21~48cm。
日本付近の平均水位上昇は、IPCCの世界平均予測をだいぶ下回るが、
気温上昇は北海道など一部で、世界平均を上回るところが出てくる。

B1シナリオは、環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する
社会を想定、第4次報告書では、2100年の二酸化炭素濃度は549ppmと、
現在の1.45倍増。気温上昇は1.8℃で、海水面は18~38cm上がると予測。
気象庁の予測による日本付近の気温上昇は、
IPCCによる世界平均予測値と同程度、海水面上昇はIPCCによる
世界平均予測よりは低いという結果。

さて、それでどうなのかということである。
山本良一・東京大学生産技術研究所教授は、国際シンポジウム
「地球温暖化と低炭素・循環型共生社会への道」で基調講演。
「3つのシナリオが、世界的に議論されている。
平均気温上昇を3℃以下にとどめる、二酸化炭素濃度で550ppmで
安定化する、というシナリオが政治的コンセンサスをとりやすい。
しかし、これでは地球上のどこでも大きな影響が出てしまう。
世界エネルギー機関(IEA)は、2030年までにあらゆる経済政策、
革新的技術を総動員して二酸化炭素の排出をさらに削減する必要がある
というシナリオを提示。
大変な努力を要するが、これをやるしかない」

気象庁の予測に使われた「すべてのエネルギー源のバランスを重視しつつ、
高い経済成長を見込んだ」AIBシナリオを前提とした温暖化対策、
二酸化炭素濃度を549ppmで安定化させるというB1シナリオでも
対策はまだ不十分。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0803/0803281.html

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