2008年4月6日日曜日

ミトコンドリア異常でがん悪性化 筑波大チームなど解明

(朝日 2008年04月05日)

がん細胞にあるミトコンドリアの遺伝子に異常が起こると、
がん細胞が悪性化し、転移しやすくなることが、
筑波大、島根大、千葉県がんセンターのチームの研究でわかった。
治療法開発につながると期待。
米科学誌サイエンス電子版に掲載。

林純一・筑波大教授(細胞生物学)によると、
細胞のエネルギーになるATP(アデノシン三リン酸)をつくる
ミトコンドリアの酵素に遺伝子変異があると、活性酸素が過剰にできる。

マウスの肺がん細胞を使った実験で、活性酸素によって、
細胞増殖を調節する物質が異常に増えることを突き止めた。

酵素に変異があるがん細胞をマウスに注射すると肺に転移したが、
マウスに活性酵素を抑える薬を飲ませると、転移は減った。
人の乳がん細胞でも、同じ酵素に異常があると
活性酸素が過剰に生み出され、悪性化することを確かめた。

http://www.asahi.com/science/update/0404/TKY200804030351.html


がんの転移を助長する突然変異
Mutations That Encourage Cancer to Spread

ミトコンドリアDNAと呼ばれるDNAの突然変異が、
ある種の腫瘍の転移を助長することが明らかにされた。
がんによる死亡のほとんどは原発腫瘍中の細胞の転移によるが、
腫瘍細胞が転移性に変化するメカニズムは明らかにされていなかった。

石川香らは、独自のDNAを持つ細胞内の小器官ミトコンドリアが
この転移プロセスにどのような役割を担っているかを調べた。
石川らは、転移能の高いあるいは低いマウス腫瘍細胞株を選び、
細胞内のミトコンドリアDNA(mtDNA)を交換。
レシピエントとなった細胞は、mtDNAを提供した細胞と同じ転移能を獲得。

1つの腫瘍細胞ラインを詳細に調べたところ、
高い転移能を付与するmtDNAは「呼吸鎖複合体I」と呼ばれる
酵素複合体の一成分をコードする遺伝子上に突然変異を保有
これらの突然変異が活性酸素(ROS)の過剰産生を引き起こし、
それが転移に関与する遺伝子の過剰発現をもたらす。

腫瘍細胞をROSスカベンジャーで処理してから移植したマウスで
転移能の低減に成功したことから、この発見は、
がん転移抑制のための治療の開発に新しい道を開いた。

"ROS-generating Mitochondrial DNA Mutations Can Regulate Tumor Cell Metastasis," by K. Ishikawa, A. Yamaguchi, H. Imanishi, K. Nakada, and J-I. Hayashi at University of Tsukuba in Ibaraki, Japan; K. Ishikawa at Japan Society for the Promotion of Science in Tokyo, Japan; K. Takenaga and N. Koshikawa at Chiba Cancer Center Research Institute in Chiba, Japan; K. Takenaga, M. Akimoto, and Y. Honma at Shimane University Faculty of Medicine in Shimane, Japan.

http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/1156906

0 件のコメント: