2010年9月27日月曜日

学習院の夏合宿(3)自転車 支え励まし230キロ

(読売 9月22日)

抜けるように青い空と白い雲の下、
草原を自転車で軽やかに駆け抜ける。
市街地に入ると、自転車の中国人から「ニイハオ」と声がかかり、
手を振ってあいさつを返す。

中国・内モンゴル自治区で行われた合宿
「学習院グリーン元気プロジェクト」。
後半は、同自治区のフフホト市周辺を6日間かけて、
自転車とバスで1周した。

植林ボランティアに汗を流した通遼市から、飛行機で約1時間。
経済発展が著しい大都市・フフホトは、高層ビルの建設ラッシュ。
市街地を離れると、景色は一変。
山、畑、土色の家、荒涼たる茶色の大地、風車、緑の草原……。
田舎の光景が広がる中、体力に応じてグループに分かれた
学生たちは、周辺の計231・5kmを自転車で走破。

サイクリングは、1日数時間。
30分ほど走って、休憩をとる。
平らな道や緩やかな下り坂は、羊や馬を眺めながらの
爽快な運転だったが、大変だったのが急な上り坂。
「かなりつらい時もあったが、必死に頑張っている仲間に
離されまいと坂を上った」、大学4年田中すみれさん(22)。
大学2年小峰千弘さん(20)は、
「初めはばらばらだったが、だんだん声をかけあい、
励まし合うようになった」

サイクリングの途中、トイレがなく、野天で用を足したりすることも。
夜は、風呂がないゲルにも宿泊するなど、
日本とは全く異なる衛生状態を体験。
「便器は、汚物に埋もれ、水も流れない。においもひどい。
見たこともない汚さに、衝撃を受けた」、
大学3年の宍戸彩奈さん(21)。

大学2年小沢裕樹さん(19)は帰国後、環境問題に関する
検定の勉強を始めた。
「環境の重要さ、特に水の大切さを痛感した。
帰国後、もったいなくて朝のシャワーを浴びていない」

学生の成長に、手応えを感じた学習院は、
植林ボランティアとサイクリングを組み合わせたこの夏合宿を、
来年度から正式な授業に切り替える予定。
環境問題に関する事前授業も実施し、
よりじっくりと取り組んでもらう。

合宿の発案者で毎回、引率役を務める上田隆穂経済学部長(56)は、
快適な日本の生活から、思ってもみなかった世界に放り込まれ、
過酷な作業、不便な生活、考え方の違いを知ることで、
支え合いを学び、たくましい若者に育っていく。
こうした効果が、夏合宿には期待できる」

◆ゲル

モンゴル高原の遊牧民が住む移動式住居。
直径数メートルの円形で、放射状の屋根がある。
中国語では、パオと呼ぶ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100922-OYT8T00219.htm

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