2010年9月30日木曜日

インサイド:米大リーグ ビジネス最新事情/2 生き残りへ低価格化

(毎日 9月15日)

高年俸の選手にお金をかけられない貧乏球団が、
プレーオフの常連となった秘密を解き明かしたベストセラー
「マネー・ボール」。

主人公のビリー・ビーン・ゼネラルマネジャー(GM)が、
今も役を務めるアスレチックスは、人口40万人の港湾都市
オークランドに本拠地を置く。
ベイブリッジを挟んで隣接するのは、人気球団ジャイアンツを擁する
大都市サンフランシスコ。
この立地条件が、ビジネス上の重しとなり、
低価格路線を余儀なくされてきた。
商圏が小さいうえ、ファンの中心は裕福ではない労働者層だから。

◆厳しい不況風

08年秋、リーマン・ショック以降の不況風は、
アスレチックスのような貧乏球団には暴風のように感じられた。
「地域経済は土砂降り。
球場に足を運んでもらうには、あらゆる料金を低く抑える以外にない」
ジム・レイヒー営業担当副社長が言うように、
球団は一段と低価格路線を推し進めた。

昨年、4枚の2階席チケットに4人分のホットドッグ、飲み物、
ピーナツが付いた「ファミリーパック」を、金曜の試合限定で売り出した。
料金は計50ドル(約4250円)、正価より100ドル(約8500円)もお得。
水曜の試合限定で、かねて好評だった2ドル(約170円)のチケットと
1ドルのホットドッグをセットにした「ダブルプレー・チケット」の
対象座席を、9000席に倍増。

今年は、大半の火曜日の試合で、17ドル(約1450円)の駐車場代を無料。
冠スポンサーを付けることで、経営への打撃を和らげている。

基本となるチケット料金も、2年連続で据え置き、
一部の座席は値下げ。
シーズンチケットも、今年10%値下げ。
対岸のジャイアンツが変動価格制度を本格導入し、
事実上の値上げに転じたのとは対照的。

スイートルームの料金にも、手を付けた。
本拠地コロシアムは、築45年目と老朽化、
米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のレイダーズと共用、
アメフット仕様になっている。
フィールドをぐるりと囲むように設計された150室のスイートルームは、
どれも定員18人(基本1500ドル)で、
「セールスがしにくい」(レイヒー副社長)。

思い切って定員を「6人以上」に改め、提供する飲食物の品数を絞って
料金設定を1人99ドル(約8400円)にした。

◆差別化に知恵絞る

低価格と同時に力を入れるのが、ファンサービス。
年5回開催する花火ショーは、他球団のそれとは一味違う。
試合終了後、観客全員をフィールド内に招き入れ、
音楽を流しながら行う。
昨年から、地元で有名な女性パーソナリティーを
ゲームの進行役に指名し、イニングの合間に
観客との掛け合いで楽しませる。

飼い犬と一緒に野球観戦する「ドッグデー(犬の日)」を、
大リーグで初めて設けたのもアスレチックス。
選手が、ファンに飲み物を注ぐチャリティーイベントも開催、
親しみやすさを前面に打ち出し、ジャイアンツとの差別化を図る。

アスレチックスと同様、地方都市を足場とし、成績も振るわない
ダイヤモンドバックスやパイレーツなどの貧乏球団は、
どこも低価格路線を鮮明。

カブスなどの裕福な人気球団は、景気後退不安が和らいだ今年、
相次いでチケット料金の値上げに踏み切った。
不況が招いた路線の違いにより、
貧富の差はますます広がっている。

http://mainichi.jp/enta/sports/baseball/news/20100915ddm035050115000c.html

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