2010年10月2日土曜日

インサイド:米大リーグ ビジネス最新事情/4 大きな富生む「新球場」

(毎日 9月17日)

ツインズの新球場「ターゲット・フィールド」の開幕試合(4月12日)は、
祝賀ムード一色に包まれた。

4機のF16戦闘機がごう音とともに飛来し、
フィールドを覆い隠さんほどの巨大な星条旗も登場。
本拠地ミネアポリスでの50年目のシーズンに当たることを記念、
選手は灰白色に縦じまの1961年当時のユニホームを着用。

「誇らしく、(無事に開幕を迎えたことに)安堵し、そして興奮を覚えた」
デーブ・セントピーター社長は、あの日の高揚感が忘れられない。

◆自治体公費を活用

新球場は、3万9504人収容。
5層の観客席と球場をぐるりと囲む、開放型のコンコースが特徴。
「雨水の再利用や省エネの照明設備を設置するなど、
世界で最も環境に配慮したスポーツ施設」、セントピーター社長。

総工費は、5億4500万ドル(約463億2500万円)。
3分の2は、地元自治体の公費で賄われた。
新球場建設は、ツインズの16年越しの悲願。

東京ドームのモデルとしても知られる以前の本拠地メトロドームは、
地元公益法人の所有。
米NFLのバイキングズなどの本拠地も兼ねていた。
スイートルームは、数室を試合日ごとにばら売りすることしかできず、
球場内の看板広告も、球団の収入になるのは外野フェンスだけ。
飲食物販売の収入も、州政府などと分け合う必要があり、
収入の手足が縛られていた。

球場は、アメフット仕様で野球観戦には向かず、
人工芝と屋根付きのドームも、「時代遅れ」と不人気。
集客は低迷し、慢性的な赤字に陥っていた。

ツインズの新球場構想は、遅々として進まなかった。
地元自治体が資金支援策をまとめるたび、
30回近くも議会や住民投票で否決・先送りされた。

しびれを切らしたセントピーター社長は、
「球団の移転も検討していた」。
05年、公益法人に対して、「ツインズは、メトロドームの契約に
長期間縛られる義務はない」と提訴。
“脅し”が効いたのか、06年春、ミネソタ州議会がゴーサイン。

◆一夜で「金持ちに」

新球場効果はすさまじい。
地元紙は08年、「年4000万~5000万ドル
(約34億~約42億5000万円)の増収が見込める」と報じた。

それまでのツインズの総収入は、約1億6000万ドル(約136億円)、
いきなり3割近くも増える計算。
スイートルームの販売、年800万~1500万ドル
(約6億8000万~約12億7500万円)と言われる
命名権販売による収入の上積みに加え、
目新しさから観客が増え、チケット収入や
飲食物・グッズ売り上げの増加も期待。

不況の影響が懸念されたが、「取り越し苦労に終わった」
(スティーブ・スミス副社長)。
真新しい新球場を一目見ようと、前年より1試合平均で
1万人以上多い、3万9700人が連日詰めかけている。
チケット料金は今年、高額シートを除いて4割以上値上げ、
実際の増収効果が試算を大きく上回ることは確実。

長年、貧乏球団に甘んじてきたツインズが、
一夜にして金持ち球団の仲間入りを果たした。

大リーグでは、92年にオリオールズが赤レンガ造りの
カムデンヤーズを建設して以来、新球場ブームが続いている。
平均すると、建設資金の5割強は公費で賄われた。

自治体の資金支援策を引き出し、新球場を造る手法は、
球団がさらなる富を得る錬金術となっている。

http://mainichi.jp/enta/sports/baseball/news/20100917ddm035050134000c.html

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