2010年11月9日火曜日

日々のストレス、ヨガでリセット

(2010年10月29日 毎日新聞社)

ヨガの人気が続いている。
パワーヨガ、ホットヨガ、笑いヨガなんてものも。
ヨガ専門誌を広げると、20種類ほどの流派が紹介、
医療へ取り入れているものも。
人気の理由はどこにあるのか?

六本木にあるフィットネスクラブ「ティップネス」。
この日のコースは、「ハタ・ヨガ」。
身体の運動だけでなく、深呼吸することで自分の内面、
つまり心のケアも行うことが目的。
参加者は約30人ほどで、9割は女性。

まず、あぐらを組んでスタート。
インストラクターの赤沼直美さんから、「三つの約束」と。
「目は開けたままで。自分の内側を観察しましょう」、
「マイペースでやりましょう」、
「呼吸を続けてください」

両手両足を床について、お尻を上に伸ばして体で三角形を作る。
顔を正面に向ける。少々きつい。
ポーズをとるだけで、肝心の深呼吸は全くできない。
「背骨を伸ばす」、「手をゆっくり上に伸ばす」。
参加者はみな真剣。

10分ほど体を動かしただけで、汗びっしょり。
体の硬さと運動不足がたたる。
リラックス効果のありそうな音楽が流れ、体のきしみだけが気になる。
ついにあきらめ、45分間コースが終了。
赤沼さんは、「ちょっと苦しそうでしたね」と優しく声をかけられ、
情けないやら恥ずかしいやら。
汗を多くかいたせいか、何だかちょっといい気分に。

ヨガ体験後、商品開発担当の水口有沙さんに話を聞いた。
ヨガは、最近では04、05年ごろブーム。
同社では、02年からオリジナルヨガプログラムを開始。
当初は、(1)脂肪燃焼、(2)美しいボディーライン作りなど、
主に肉体面での能力向上を目指していた。
瞑想を取り入れ、メンタル面を重視する傾向に変わりつつある。
赤沼さんも、「ヨガの原点は、精神面の強化。
抱えているストレスを、どうコントロールするかが大事」と汗をふいた。

ヨガ人口って、どれくらいなのだろう?
ヨガマットなどの製造会社「ヨガワークス」社長の綿本哲さんは、
「市場リサーチの結果、全国でだいたい100万人ほど」と見積もっている。
ヨガマットの売れ行きも7、8年前の3倍以上、
最近では、耐久性の優れた1万円以上の高価なマットも売れ行きが順調。

綿本さんは、「最近の傾向として、ヨガをマスターした人が
近所の友達と一緒にサークルを作って活動する。
20~30人でレッスンするヨガ教室から、数人単位へと次第に細分化。
すそ野が広がりつつあり、今後もヨガ人口は増える」

以前、ヨガが注目されたが、オウム真理教が取り入れていたため、
90年代の一連の事件のあおりを受け一時、下火に。
マドンナなど、ハリウッドスターがシェイプアップに役立てたことが
知れ渡ると人気を回復、今のブームに。

ヨガは健康にいい、というイメージも。
「日本ヨーガ療法学会」(木村慧心理事長)は、
気管支ぜんそくや高血圧など、メンタル面でのダメージをきっかけに
発症する「心身症」の改善のため、ヨガを取り入れている。

理事長の木村さんによると、投薬治療だけで治りきらない患者に、
ヨガを勧めている。
同学会では療法士を育成し、医療機関と連携して
患者の健康維持に努めている。
療法士は、現在約760人にまで増えた。

「笑いヨガ」なるものもある。
笑いが体によいと聞いたことはあるが……。
ギャグを出し合ったりするのだろうか?

「日本笑いヨガ協会」の高田佳子代表に会った。
赤いフレームの眼鏡をかけ、インドの民族衣装のような服装。
なんだか、おおらかな雰囲気が漂う。

この日の教室に集まったのは、初心者から経験者まで男女約20人。
20歳代から70歳代くらい。
テレビ番組で紹介されると、肩こりや腰痛で悩む女性からの
問い合わせが増えた。

笑いヨガは、15年ほど前、インドの医師が生み出したとされ、
現在では60カ国以上に広がっている。
面白いことを言うのではなく、多少無理をしてわざと笑う。
ヨガの呼吸法を取り入れている。
ポイントは、年齢や性別、経験に関係なく、誰にでもできること。

代表の高田さんは、お笑いのパフォーマーをイベントに招く仕事。
大学院で老年学を学び、高齢者の健康と笑いを結びつけようと、
自らインドへ行って研究。

高田さんは、「子どものころって、よく笑いましたよね。
大人になるにつれ、笑う機会が減ります。子どもに帰ってみましょう」

「握手したら、静電気が起こりました」という設定で、
出くわした人と手を触れ、「アハハハハ!」。
こうして室内をぐるぐると回る。
最後に「ほっほっハハハ」と言いながら、立ち止まって両手を大きく広げる。

設定はさまざまで、「飛行機に乗ってハワイへ飛んでいく」、
「クレジットカードの明細書を見て、その高額に驚く」など。
ふと見渡すと、みんな汗びっしょり。
最後は座って、ヨガの呼吸で息を整えてクールダウン。

参加の動機を聞いてみた。
会社員の女性(43)は、「昨日、子どもの育て方を間違ったかな、
と思うことがあって……。
これで解決するわけではないが、新しい気持ちで向き合える」
60代の女性は、「ストレスが原因で体調を崩してしまって。
汗をかいてすっきりした気分」と満足げ。

日本ヨーガ療法学会理事長の木村さんは、
「高度成長した社会では、ストレスがたまりがち。
高齢化社会になると、より健康で過ごしたいニーズが高まる。
自分で自分をケアできるヨガが求められるのは、自然なこと」

自殺者が、毎年3万人を超える日本。
ヨガ人気は、ストレス社会の裏返しなのかもしれない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/29/127686/

0 件のコメント: