2010年11月11日木曜日

先進国で肥満深刻化 3割超す国も/貧困層で増加/啓発充実など各国に求め

(2010年11月5日 毎日新聞社)

先進国の肥満の現状と予防策の費用対効果について、
経済協力開発機構(OECD)が、初の報告書を発表。
貧困層での肥満増加が目立ち、米国や英国など10年以内に
国民の3分の2以上が太りすぎや肥満になると予測される国もある。
OECDは、各国政府に健康教育の充実などの対策強化を求めている。

報告書は、各国の公衆衛生の専門家らが3年がかりでまとめた。
世界保健機関の基準に基づき、肥満を「体格指数(BMI)30以上」と定義。
日本人は、極端に太らなくても高血糖などを伴う人が多いので、
国内では日本肥満学会の診断基準に基づいて「BMI25以上」を肥満。

加盟33カ国の成人人口に占める肥満の割合は、男性16%、女性17%。
国別では、日本が男女とも3%で最少。
最多は米国で、男性32%、女性36%。
多くの国では、肥満に関係する病気の医療費が全体の1~3%、
米国では5~10%に上る。

日本肥満学会の松沢佑次理事長によると、内臓脂肪がたまると、
脂肪細胞から血圧を上げる物質が多く分泌され、
高血圧になりやすくなるなど、肥満と生活習慣病の関係が解明されつつある。
松沢理事長は、「日本人は、生活習慣を変えると改善する人が多いが、
欧米に多い極度の肥満では、胃を小さくするなどの治療が必要なケースも

肥満はぜいたく病、ととらえられがちだが、最近は貧困層に多い。
安く高カロリーな加工食品が増えたこと、
健康に関する知識が普及していないことなどが背景。

日本を除く9カ国を対象にした分析では、
女性は米国、韓国など6カ国で、所得や社会的地位が最も低い層で
肥満のリスクが最も高かった。
男性も、オーストリアやフランスでは所得などが低くなるほど肥満が増えた。
豪州、カナダ、英国、韓国では、女性は教育を受けた年数が長いほど、
肥満率が低い傾向。

米国では、女性全体の失業率約30%に対し、
深刻な肥満の白人女性の失業率は40%超。
スウェーデンの研究では、肥満の人の所得は正常な体重の人より
18%少なかった。
報告書は、企業に「肥満の人は生産性が低い」という思い込みがあって、
肥満でない人を採用する傾向にあり、所得格差の一因。

報告書作成に参加した水嶋春朔・横浜市立大教授(公衆衛生学)によると、
OECDは、脂質などの摂取量や運動の頻度、肥満の程度、
血圧、血糖などを基に、肥満に関連する一部がんや脳卒中、
虚血性心疾患といった慢性疾患の死亡リスクを分析。
学校での健康教育、食品へのカロリー表示、医師と栄養士による個別指導など
九つの対策による効果を試算。

日本の場合、医師と栄養士の指導により、
年8万5000人の死亡を減らすことができると試算。
学校教育で約1万2000人、食品表示の改善で約2万人の減少。

対策が定着すれば、コストも下がる。
全対策導入20年後の年間費用は、1人当たり平均19ドル。
脳卒中などの死亡を年15万5000人
(09年の全死亡者数は114万4000人)減らすことが可能と分析。

肥満の少ない日本で、これほどの効果が予測されるのは、
人口が多い上、他の先進国に比べ、高齢化が進んでいるため、
同じ対策で加齢に伴う生活習慣病予防につながる。

報告書では、健康寿命が延びることは期待できるが、
高齢化によって医療費は増加するため、
肥満対策の医療費削減効果はわずかだと指摘。

水嶋教授は、「日本人の場合、BMI25未満でも糖尿病を発症する人が多い。
脳卒中対策として、減塩指導などを長年実施し、日本の生活習慣病対策を
考える上では、喫煙など肥満に関係しない側面も考慮する必要」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/5/127918/

0 件のコメント: