(日経 2月22日)
国内市場の伸び悩みや中国勢の台頭で、
厳しい経営を迫られている日本のアルミニウムはくメーカー。
どのような成長戦略を描くのか?
日用品向けのアルミはくで、国内の3分の1のシェアを持つ最大手、
東洋アルミニウムの今須聖雄社長に、市場動向と同社の戦略を聞いた。
——中国勢の台頭をどう見るか?
「中国メーカーの脅威をひしひしと感じている。
アルミのはくには、家庭用アルミホイルなどの日用品向けと、
コンデンサーなどに使う電子部品向け。
日用品向けのアルミでは、中国製品にコストでは勝てない。
家庭用の容器を手掛ける当社のグループ会社でさえ、
当社製のアルミを使ったら赤字になるため、中国製を使っている」
——品質ではどうか?
「品質レベルでも、中国勢は日本に追いついてきている。
ある飲料容器に使うアルミで、メーカーが求めるのは、
長さ6万mで継ぎ目のないロール。
これだけの長さを継ぎ目なしで巻き取るのは、相当な技術が必要。
この製品は、今ではほぼすべて中国製。
中国勢の品質がかなりの水準に達している証拠」
——なぜ安く品質のよいものを作れるのか?
「機械が、品質を保証しているようなもの。
昔は、アルミの技術と言えば、アルミの板に圧力をかけて延ばす
圧延機のロールを、いかに精密に研磨するか。
今では、研磨は人の手から機械による制御に変わった。
熟練した技術の蓄積は必要ない」
「中国では、最新鋭のドイツ製の圧延機を導入。
当社の1番新しい圧延機でも、約30年前に導入、
丁寧に整備しながら使っている」
——価格や品質でなければ、何で勝負するのか?
「当社の競争力は、他社の先を行く開発に尽きる。
中国勢など、他社がいずれはまねして同等の製品を
作るかもしれないが、そのころには次の製品を開発。
我々の強みは、長年にわたって開発投資を続けてきたこと。
既にある製品をまねるだけなら開発費はいらず、
だからこそ安く作れるという面も」
——具体的な開発案件は?
「アルミのペーストでは、光の屈折率を利用し見る角度によって
見える色が違う塗料などの開発に力を入れている。
アルミのはくでは、中身が付着しないヨーグルトのふたがある。
撥水性を持たせたふたで、大学の教授などにも相談して
3年がかりで開発。
ふたを開けても、ふたに中身が付かず、こそぎ取る必要がない。
これは先月、森永乳業の新製品として発売」
——良いものは、すぐ競合他社が追随して安く作るようになる。
「常に他社の先を行くしかない。
顧客がほしいと思うもの、困っているものをいち早く察知し、
他社に先んじて製品化。
顧客のニーズを何度も確かめながら進め、
ニーズがなくなったらすぐやめる。
当社では営業開発部と、中核技術の開発を担う
『コアテクノロジーセンター』が連携しながら、
機動的に顧客のニーズの把握と技術開発を行っている」
——国内では、市場の伸び悩みが予想。
「『国内向け』、『輸出』と区別するのではなく、
アジア全体を1つの市場と見ている。
成長を維持していくには、当社にとっても市場の広さを変える必要。
中国だけでなく、インドまでを含めて1つの市場ととらえて販売を拡大」
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int100219_2.html
0 件のコメント:
コメントを投稿