(日経 2010-02-22)
民生・業務部門のエネルギーが、依然として増加傾向で推移。
業務部門は、産業分類でいう第3次産業にあたる部門での
エネルギー消費。
この部門の就業人口比率は、1990年には60%、
比率は年々増加、2005年には67%へと7ポイントも上昇。
この間のエネルギー消費量は約30%も増加。
就業構造の変化が、民生業務部門のエネルギー消費を
大きく増加させた。
この業務部門には、事務所ビルから百貨店・スーパーなどの
小売業や学校、飲食店、病院、ホテル、娯楽場など、
多種多様な用途が含まれている。
これらをひとくくりにし、エネルギー消費のあり方を論ずることは
きわめて乱暴。
日本には驚くことに、この部門のエネルギー消費を
経年的にとらえた統計書が存在していない。
京都議定書からいち早く離脱した米国でさえ、
2度の石油危機直後から、詳細なエネルギー実態調査が実施。
わが国に、1日も早くこの様なデータベースの整備が望まれる。
今回は、業務部門の中で約2割の比率を占める事務所ビルを
主なターゲットにした、「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」
の報告書が公表。
国際エネルギー機関(IEA)が、洞爺湖サミットにおいて、
ZEB普及への取り組み加速を勧告、わが国でも昨年4月、
新公共建築物での30年までのZEB化に向けた開発などを加速。
この動きを、一般のビルに拡充することを目的に、
経済産業省資源エネルギー庁に筆者も委員として参加する
機会を得た「ZEBの実現と展開に関する研究会」が設置、
11月に報告書がまとまった。
ZEBの定義は、建築物における1次エネルギー消費量をほぼゼロ。
建築物・設備の省エネ性の向上、エネルギーを、
複数建物間で利用するような面的な利用、ビルやその敷地内に
太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーを積極的に活用、
ビルの年間の1次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ、
おおむねゼロとなる建築物。
この様な動きは、英国では、08年に財務大臣が
「19年までにすべての新築非住宅建築物をゼロカーボン化する」
との野心的な目標。
米国でも、エネルギー自立安全保障法(07年)で、
30年までに米国で新築されるすべての業務用ビルを、
40年までに米国の既存の業務用ビルの50%を、
50年までに米国のすべてのビルをZEBとするための
技術・慣行・政策を開発普及する。
報告書中に示されたわが国におけるZEBの可能性であるが、
30年頃までの技術進歩の見通しなどをもと、
中・低層のオフィスビルについて概算すれば、
ZEBの実現は技術的に可能。
完全にZEBとなるのは、3階建て以下のビルであるが、
10階建て程度でも、現状のエネルギー消費量の8割削減が可能。
エネルギーの面的利用(複数ビル間での相互活用)、
太陽光パネルの建材化(壁面利用)などを加味すれば、
ZEBのポテンシャルはさらに大きいもの。
ZEB化について、新築公共建築物に限定、
30年までにすべての新築建築物全体で実現、
さらに既築の省エネ改修の大幅な増加を見込めば、
30年に1次エネルギー消費量は概ね半減すると推計。
ZEBの実現と展開に向け、マーケットの変革を促進させるには
規制、支援・誘導、社会への情報発信・啓発を
バランスよく進めることが必要。
制度面、技術面、ワークスタイル面の3つのイノベーションを
加速することも必要。
報告書では、ZEBの目標達成を、わが国の産業の競争力強化の
チャンスととらえるべきだ。
この様なビルの造り方が、やがてデファクトスタンダードになる時代は
もう目前に迫っている。
地球温暖化はもとより、資源エネルギーの有効利用が必須の時代、
従来にはない発想と行動が求められていることだけは間違いない。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan100219.html
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