(読売 2月24日)
学校での解決が難しい問題への対応を、様々な専門家が支援。
京都市教育相談総合センターの会議室に、
弁護士や医師、臨床心理士らが集まった。
「保護者に電話をかける時間は設定できないんですか」、
「無理な要求でも、子どものために先生はギリギリでやっていた」、
「それは否定しないが、逆に問題を大きくするのでは」
学校での解決が難しい保護者とのトラブルを、専門家を入れて話し合う、
京都市の学校問題解決支援チームの定例会議の場面。
この日は継続1件、新規1件を議論。
休憩を挟まず、予定の2時間を30分も過ぎる白熱ぶり。
チームは、2007年8月に発足。
保護者を含めた専門委員5人と、事務局職員ら常任委員9人。
これまでに取り上げた事例は23件。
親や子どもの状況と心理をつかむため、
家族構成図も示して、丁寧に事実を確認。
ある中学校で、生徒がけがをしたケース。
その親は、「教員がけがをさせた」と言い、半年余りで学校側に
計約100回の抗議をする一方、警察に被害届を提出。
「服が破れたから弁償しろ」とも要求。
生徒は不登校になる。
チームの弁護士は、学校に出向いて事実を調べた。
保護者が面会を拒絶する中、学校側は生徒の学習機会を
保障するため、家庭訪問を繰り返し、補習に生徒を呼んだ。
事件にはならず、学校内では、「卒業にあたり、服ぐらい
弁償してもいいのでは」という声もあったが、
チームは「法的に線を引いたケース。それはふさわしくない」と助言。
収束までに1年かかった。
チーム統括の桶谷守・京都市教育相談総合センター所長は、
「専門家の助言で、教職員が自信を持って保護者対応ができ、
子どもが安心して学べる環境ができる」と狙いを説明。
とはいえ、強制力がないため、解決に時間を要し、
解決に至った事例も23件中5件と、全体の2割。
クレームを繰り返す保護者から、突然、弁護士を通して書面が届き、
動揺してしまう教職員も少なくない。
こうした現場に対応するため、東京都港区には、
業務委託先の弁護士団体から、法律的なアドバイスを受けられる
「学校法律相談制度」がある。
制度開始から8か月後の08年2月、区教委は、区立幼稚園と
小中学校の教職員373人に意識調査をした。
ほぼ全員が、「利用したい」、「助かる」と好意的だった一方、
法的な解決以外でクレーム対応に必要なものを尋ねたところ、
「保護者との信頼関係」が最も多かった。
区教委は、「法律相談はあくまで、知識として欠けているところを
補うもの」と位置づけ、問題が発生した時、
学校自らが対応を考える姿勢は変わらない。
保護者と教師との橋渡し役に、第三者が出てくるのは最後の手段。
日頃から互いに信頼を積み重ねておけば、
まったく無縁の存在にもなる。
◆学校問題解決支援チーム
教育改革を掲げた安倍首相(当時)の諮問機関「教育再生会議」が、
第2次報告(2007年6月)で各教委に設置するよう唱えた。
長崎と沖縄の県教委のほか、新潟、横浜、成田、鈴鹿、豊中、
北九州の各市教委などにある。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100224-OYT8T00255.htm
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