2010年3月20日土曜日

日本語を学ぶ(2)「聞・話・読・書」の能力把握

(読売 3月4日)

子どもの日本語能力判定などを取り入れた
「鈴鹿モデル」が関心を集めている。

三重県鈴鹿市立牧田小学校の「いきいき教室」国語科に、
ブラジル人、ペルー人、フィリピン人の2年生児童8人。
同じ時間に、在籍学級で日本人児童らが受けている
国語の授業を離れた「取り出し」授業。

教師「『お気に入り』って何かな」、児童「一番好きなこと」、
教師「じゃあ、お気に入りのおもちゃは何かな、紙に書いてね」

大人は3人。
教員のほか、ポルトガル語を話す支援者、市教育委員会が
派遣する日本語教育コーディネーターの中川智子さん(32)が、
子どもたちの間を回り、わからない言葉につまずく
子どもがいればフォローする。

同市では、市立小・中学校に、日系人を中心に
外国人児童生徒607人、日本語指導を要する子ども340人が在籍。
日常会話に支障なく見えても、国語、算数などの授業に参加する
日本語力が足りずに伸び悩み、小学校高学年、
中学・高校でつまずく子どもは少なくない。

「授業に参加する力」を育てようと、
市教委は、早稲田大学日本語教育研究科の川上郁雄教授(56)
支援を受け、昨年4月から、子ども向け日本語教育の
専門知識と実践経験を持つコーディネーターの派遣など、
様々な取り組みを始めている。

注目されるのは、日本語を母語としない者に対する
日本語教育の考え方であるJSLの一環として、
川上教授が考案した「JSLバンドスケール」を導入したこと。

「聞く・話す・読む・書く」の4技能に関する能力判定基準で、
小学校低学年、同中高学年、中学・高校ごとに、
7~8レベルの基準がある。
日本語でやりとりする様子から、「黙っている」、
「あいさつの言葉を使い始める」、
「長い説明になると、文がブツブツ切れる」などを把握。

同スケールを使って、牧田小で外国人児童の指導を担当する
山田雅子教諭(47)によると、「日本語は大丈夫そうだ」と
いったん取り出し授業への参加を中止した児童が、判定の結果、
「まだ在籍学級の授業についていけない」として戻ったケースも。
「景気の影響により、転校や帰国、再来日などで動く子どもも多く、
客観的に日本語能力を判定できるのは助かる」

川上教授は、「外国籍の子どもたちは学校間、自治体間、国家間を
移動し、その『学び』が分断される可能性が高い。
子たちの能力判定を、現場教員の経験任せにしてはいけない」

鈴鹿モデルでは、独自の日本語指導教材作成という成果も
表れ始めている。
旗振り役の水井健次教育長(65)は、
「将来は、日本の各地で外国人が増える。
鈴鹿は、よその町より『少し先』を経験しているわけで、
外国人が多いことを『強み』にしたい。
可能なことには、できる限り取り組んでいく」

◆JSL(Japanese as a Second Language)

日本語を母語としない子どもたちの日本語学習支援。
文部科学省によると、日本の公立小・中学校・高校などに通う
外国人児童生徒で、日本語指導が必要とされるのは
計2万8575人(2008年9月現在)。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100304-OYT8T00246.htm

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