2010年3月19日金曜日

職場の禁煙、やっと始動 受動喫煙防止

(2010年3月12日 毎日新聞社)

職場での受動喫煙の防止を議論してきた
厚生労働省の有識者検討会が先月、
「従業員の健康を守る観点から、原則禁煙を目指す」との
報告書骨子をまとめた。

「喫煙対策が難しい」とされる飲食店にも、
喫煙室の設置を求めるなど、労働安全衛生法の改正を含む
全面禁煙をにらんだ対策を提案。
世界保健機関(WHO)が求める屋内環境の
「スモークフリー(たばこの煙ゼロ)」に、
日本の職場もようやく本腰を入れることに。

産業医大の研究チームが昨年、喫煙可能なファミリーレストラン、
喫茶店、ホテルで働く従業員計9人に依頼、
勤務時間中に携帯型粉じん計をつけてもらった。

従業員が吸入する受動喫煙の濃度は、
禁煙区域から喫煙区域に移動すると増え、特に接客中は
喫煙区域内の平均値の最大7・7倍まで増加。
食べ物などを提供する際、テーブルに置かれた灰皿に
かがみこんだり、喫煙中の客が吐き出す煙を浴びることが原因。

「飲食店従業員の受動喫煙が高いことは予想されていたが、
これほど高いとは思わなかった」と、大和浩・同大教授(健康開発科学)。
飲食店など接客業の人が、勤務中にさらされる
たばこの煙の量が明らかになったのは初めて。

喫煙者が発するたばこの煙には、発がん性物質などが含まれる。
WHOは07年、「たばこ規制枠組み条約」(05年発効)に基づき、
「屋内の職場、公共の場所は100%禁煙に」との指針。
日本の現状の喫煙対策は、十分とはいえない。

07年、厚労省の労働者健康状況調査によると、
事業所全体を禁煙にしている割合は18・4%、
「職場で他者のたばこの煙を吸うことがある」と答えた人は56・4%。
顧客の喫煙の規制が難しい飲食店・宿泊業では、
喫煙対策に取り組んでいない割合が3割近い。

大和教授は、「諸外国では一般の職場だけでなく、
居酒屋やバーも含め全面禁煙。
日本も、顧客の視点だけではなく、働く従業員の
健康を守ることが急務だ」
社内の全面禁煙に取り組み、10年以上になる企業もある。

子ども向け教材メーカー「ジャクエツ」(敦賀市、従業員650人)は、
99年に「禁煙宣言」。
当時の従業員650人のうち、喫煙者は約350人、
禁煙することを宣言した社員に5万円の「健康祝い金」を贈ったり、
禁煙した社員の名前を新聞広告に載せるなど、禁煙を後押し。

禁煙を開始した99年度、422人いた病気の欠勤者が、
翌年は同287人に減り、現在も同様の傾向。
禁煙の呼びかけは、取引先の企業などにも広げた。
上野渉・同社取締役総務部長は、「以前は、喫煙のため
席を離れるなど、仕事の効率が損なわれることもあった。
実際は、禁煙したい人が多く、他社への呼びかけでも
抵抗は少なかった。
遠慮せずに声をかけることは、禁煙のきっかけを
提供することになる

日本の職場の喫煙対策は、労働省(当時)が1992年に策定した
「快適職場指針」で、受動喫煙対策を「必要に応じて講じる」と
明記されたのが最初。
96年、「職場における喫煙対策のためのガイドライン」が作られ、
03年、健康増進法施行を受け、事業者は全面禁煙や分煙に
取り組むことが望ましいと改正、喫煙室の設置などが始まった。

職場の喫煙対策を議論してきた厚労省検討会がまとめた
報告書骨子は、「職場のたばこの煙は、健康リスクの要因になる
事業者に、全面禁煙導入などの対策を義務付けることを提言。

先月末、職場を含む公共の場全般でも原則禁煙を求める
厚労省健康局長通知。
望月友美子・国立がんセンター研究所たばこ政策研究
プロジェクトリーダーは、「成人の約2割を占める喫煙者のうち、
禁煙を希望する人は約8割。
吸い続けたい人は全体の4~5%、
受動喫煙の危険性の理解が広がれば、喫煙率はさらに下がり、
たばこをやめたいと思っている人も吸わない人も
守られる方向に対策が進むだろう」と期待。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/3/12/117303/

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