2011年1月25日火曜日

インタビュー・環境戦略を語る:大林組・白石達社長

(毎日 1月17日)

スーパーゼネコンの大林組は、電波塔で高さ世界一になる
東京スカイツリーなど大型建造物を手がける一方、
環境に配慮した新技術開発にも力を入れる。
白石達社長に、同社の環境戦略を聞いた。

--建設段階のCO2排出量を、2020年までに90年比で
70%削減する数値目標を策定した理由は?

◆10年までに17%削減することを00年に宣言したが、
07年に前倒しで達成。

現場の建設機械の省エネ運転が、大幅削減につながった。
工法や建物の環境性能について、関与できる立場にいるだけに、
これだけでは不十分。
環境への負荷をかけない技術や資材の開発・普及にさらに力を入れる。

--新工法でのトンネル掘削を08年から始めた。

◆シールドマシンで、地表から地下に掘り進める
URUP(ユーラップ)工法で、CO2排出量は半減。

通常の工事では、まず立て坑を掘ってシールドマシンを地下に入れ、
マシンで横に掘り進めるが、URUPではマシン自身が掘りながら
地下に潜り、地上にも出てくる。
不要な掘削が減り、工期は3分の1に、
建設時に発生する土の運搬量も減る。

工事で道路を占有する期間が短くなるので、交通渋滞の緩和にも寄与。
都市部の立体交差の建設で特に力を発揮し、
現在、首都高速中央環状品川線の大井地区トンネル工事など、
全国4カ所で実施。

--資材面では昨年、CO2排出の少ない低炭素型のコンクリートを開発

◆製鉄時に発生する廃棄物、高炉スラグに特殊な薬剤を混ぜ、
一般的なセメントの強度やコストはそのままに、
CO2排出量を8割削減。

日本では、年間約1億トンのコンクリートを使うが、
仮にすべてを低炭素型に置き換えれば、国内CO2排出量を1・8%削減。
東京都内に建設予定のビルでの採用が決まっており、2年以内に実用化。

--低炭素型の「エココンクリート」が生まれたきっかけは?

◆アブダビで昨年5月、環境に配慮したコンクリートの
コンペティションが企画。

現地にある材料で、CO2排出量が半分のコンクリを作ったが、
現地の事情でコンペが中止に。
仕方が無いので、日本にある材料で試作したら、8割も削減。
けがの功名ですね。

--業界全体に広がりそうか?

◆コンクリートの新技術は、自社で囲い込まず、他社にも開放。
一層の普及には、国の奨励策も必要。

環境資材の消費税を免除すれば、コストも下がり、
技術開発は先へ先へ進む。
年80億円規模の研究開発投資を継続し、社会の期待に応えたい。
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◇しらいし・とおる

東大工学部建築学科卒。71年大林組入社。
専務執行役員・東京建築事業部長を経て、07年6月から現職。
大阪府出身。63歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2011/01/17/20110117ddm008020030000c.html

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