2011年1月29日土曜日

インサイド:次代の針路 第4部 スポーツ留学生の受難/5止

(毎日 1月22日)

京都・都大路を舞台に開かれた全国高校駅伝。
6度目の出場となった滋賀学園高(男子)は、
出場47校中39位に終わった。

04年、ケニア人留学生を擁して13位に入ったが、
留学生がいなくなった翌年から3年間は都大路も遠ざかり、
戻ってからも30位台をさまよう。

大河亨監督は、「留学生がいたころは、(最長の)1区で飛び出して、
その後は順位を落としていくだけ。
今では、少しでも順位を上げていく駅伝らしさがチームに出てきた」、
留学生の有無の違いを話した。

駅伝を含む全国高校総体での留学生の規制は、
94年の全国高校体育連盟の理事会で適用が決まった。

留学生の出場枠について、
「おおむねエントリー数の20%前後を原則とする」と、
人数を制限する内規を決定。

駅伝では、レースを左右する最長1区(男子10km、女子6km)への
起用が増えたため、07年に予選を含めた出場校にアンケートを実施。
1区からの除外に、7割を超える賛成があり、
08年の都道府県予選から、
「1区では留学生を起用できない」との規制に踏み切った。

滋賀学園高が、留学生の獲得に乗り出したのは01年。
当時は、留学生を擁する仙台育英高や青森山田高などが駅伝で活躍、
強化には有効な手段と考えられていた。

実業団の監督を通じて紹介してもらい、留学生を日本に連れてくるまでの
初期費用は約150万円。
現地のエージェントを頼るルートと比べて格安。

大河監督は、「5000mで13分台という世界レベルの走りを
目の当たりにして、ほかの選手たちの刺激にもなった」

2人目の留学生だったジョン・カリウキが、全国大会でも区間賞を
獲得するほどの活躍を見せるなど、チームの成績は上昇。
結果的に、滋賀学園高の留学生受け入れはわずか4年で終わる。

周囲から、留学生に頼るレースへの批判が聞こえてきたから。
留学生が、ほかの部員と遊びに行く時の小遣いやマッサージなどの費用、
携帯電話代は大河監督が個人的に援助。

大河監督は、「積み重なっていくと、資金的に苦しくなった。
日本人の生徒が、1区を走らなくていいと思う悪い面もあった」

留学生を「20%前後」とする規制は、全国高体連加盟の他競技にも適用。
バスケットで福岡第一高のセネガル人選手の年齢詐称疑惑が起きたり、
駅伝の愛知・豊川高では、出席不足で退学処分となった
ケニア人選手が失踪する問題が発覚。

全国高体連は、昨年12月の理事会で、大会に出場する留学生には、
「外国人登録証明書」の写しを参加申請書に添付させることを義務づけ、
登録日により就学の事実を確認することを決めた。

強化目的に偏った過剰な留学生獲得に歯止めをかけ、
競技の公正化を図ろうとするスポーツ団体。
規制の強化で、門戸が狭まる留学生。

大河監督は、「勝負だけを考えた留学生獲得には、
マイナス部分があるかもしれない。
外部からの批判もあったが、指導者として留学生の生活や考え方を
知ることができ、財産になった」

日本の教育システムの中で、スポーツ留学生をどう位置づけるか?
国際理解を深め、交流を図る留学生本来のあり方が問われている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/01/22/20110122ddm035050096000c.html

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