2011年1月27日木曜日

インサイド:次代の針路 第4部 スポーツ留学生の受難/3

(毎日 1月20日)

すっかり日が落ちた、埼玉県東松山市にある
大東大ラグビー部のグラウンド。

全国大学選手権を終え、新チームを始動させた後輩たちが
練習する傍らで、4年生のトンガ人留学生、
シリベヌシ・ナウランギとシオネ・テアウパが体を動かしていた。

ナウランギは、「進路がまだ決まらない。
でも、いつ声が掛かってもいいように体は維持しないと」と、
沈痛な面持ちで打ち明けた。

◆「ラグビー続けたい」

2人が進路を意識したのは、4年生になってから。
当初、日本最高峰であるトップリーグ(TL)のチームに
進めるものだと思っていた。

青木忍監督らスタッフも奔走したが、秋になってもチームは決まらず、
「トップイースト」などの下部リーグでも、色よい返事はなかった。
「こんなに厳しいと思わなかった。
日本で働き、ラグビーを続けたい」とテアウパ。

卒業まで2カ月あまり。
現在は、さらに下のリーグを対象に進路を模索。

大東大は、1980年に初めてトンガ人留学生を起用し、
86年度の全国大学選手権で初優勝。

88年度、94年度にも大学王座に輝いて、「トンガ人旋風」を巻き起こした。
恵まれた体格、身体能力を誇る留学生は、
多くが社会人チームに進み、日本代表の戦力となって、
日本のラグビー界を支えてきた。

留学生を受け入れる傾向は各地に広がり、関東ラグビー協会によると、
外国人選手登録をする1年生の数は98年に2人、
10年後の08年には19人に増加。
高校ラグビーでも、留学生は珍しい存在ではなくなった。

◆TL加入は狭き門に

留学生が増加する一方、近年その就職事情は一変。
大東大元監督で、関東大学連盟の鏡保幸理事長は、
「昔は珍しかった留学生が増え、競争が激しくなった」

TLの各チームは、不況で採用を減らしている上、
外国人選手はニュージーランドやオーストラリアなどで実績を残した
プロ選手を「助っ人」として獲得。

留学生が入り込む余地は、確実に狭まっている。
ナウランギ、テアウパの就職活動を通し、
「同じ外国人なら、多少お金をかけても即戦力が欲しいのだと
痛感した」と青木監督。

TLでは、登録人数こそ制限はないが、試合に同時に出場できる
外国人は3人まで。
チームからは留学生獲得の条件として、国籍変更を求められる
ケースが増え、青木監督は、「今は日本の学生でも(就職は)厳しいが、
留学生に課されるハードルはさらに高い」

鏡理事長は、大東大監督時代に指導した留学生のほとんどが、
「卒業後も日本で働き、国の家族を助けたい」と、

「留学生も、ラグビーでは実力で選抜される時代。
受け入れ側が責任を持って指導し、ラグビーを続けられなくても、
日本で働けるようにさせてあげなくてはいけない

ナウランギは、同じトンガ人留学生の後輩2人に、
自らの状況を話した上で、「遅くとも3年生になったら進路を考え、
日本人と同じ就職試験を受けるつもりで勉強しておかないと厳しいぞ」

日本での成功を夢見て、海を渡ってきた留学生の間に、
危機感が広がる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/01/20/20110120ddm035050024000c.html

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