2011年5月29日日曜日

武田薬品、欧大手買収を発表 世界12位、海外拠点70カ国に

(2011年5月20日 毎日新聞社)

武田薬品工業は、スイスの製薬大手「ナイコメッド」の全株式を、
96億ユーロ(1兆1136億円)で取得、完全子会社化することで合意。

国内製薬会社による買収では、過去最大規模。
同社の医療用医薬品の売上高は、世界16位から12位に浮上。
販売網が手薄だった欧州や新興国市場への本格参入を果たす。

ナイコメッドの10年12月期の売上高は約3700億円、
欧州が5割、ロシアや中南米、アフリカなど新興国での売り上げが約4割。

武田は、11年3月期の売上高1兆4193億円のうち、
8割強を日米が占め、新興国への展開が遅れていた。
今回の買収で、武田の進出拠点は28カ国から70カ国へと大幅に拡大。

世界の医薬品市場は、日米市場が医療費抑制策などの影響で
伸び悩む一方、新興国は10~15年の成長の7割を占める見通し。
武田は買収に伴い、金融機関から7000億円規模を借り入れ、
今年9月末までに株式取得を終える方針。

◇特許切れ前に基盤強化

主力薬の特許が、12年以降に相次いで切れる「2012年問題」を抱える
武田にとって、ナイコメッド買収は「時間を買う戦略」(外国証券)以外の
何ものでもない。
武田は、販売網がないロシアや東欧、アフリカなど新興国市場で
収益基盤の強化を狙うが、巨額の借り入れは「ものすごい冒険」(武田OB)、
格付け会社のムーディーズ・ジャパンとスタンダード&プアーズ(S&P)は、
武田の格付けを引き下げる方向で検討する。

武田の「2012年問題」は深刻。
売り上げの3割近くを占める稼ぎ頭の糖尿病治療薬「アクトス」は、
既に日米欧で特許が切れ、最大市場の米国で12年8月から
後発薬の販売が可能。
15%を占める高血圧治療薬「ブロプレス」も、
14年前後に特許切れを迎え、後発薬にシェアを奪われかねない。

別の主力薬の特許切れで、武田の11年3月期は2年連続で減収。
アステラス製薬とエーザイも、同じ理由で前期は減収。
新薬に代わる収益源として、海外進出は急務。

武田は08年、米バイオベンチャー、ミレニアム社を
約88億ドル(約9000億円)で買収、売上高への寄与は
全体の約5%に過ぎない。

長谷川閑史社長は、「両社は(事業エリアの)重複が少なく、
相乗効果が発揮できる」と今回の買収に期待。

巨額の投資で、財務基盤は一時的に悪化。
長谷川社長は、今後の大型買収を問われ、
「あまり期待されない方がいいんじゃないですか」とかわした。
「キャッシュに余裕があるうちに仕掛けた最後の大型買収」(武田OB)が、
経営の即効薬となるか、真価を問われる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/5/20/136824/

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